1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

川崎重工「裏金」で海自隊員へ金品供与の悪習 長年の癒着構造が追い風の"防衛バブル"に冷水

東洋経済オンライン / 2024年7月12日 7時30分

2023年に竣工した潜水艦「はくげい」。引渡式には多くの防衛省関係者が出席した(写真:川崎重工業)

「潜水艦村の常識が、世の中の流れから取り残されていたのだろう」

【表で見る防衛装備の契約額上位10社】川崎重工は三菱重工に次ぐ2位

重工大手の川崎重工業が海上自衛隊の潜水艦乗組員らに対し、金品や飲食代を提供していた問題が明らかになった。こうした癒着行為は少なくとも6年前から続けられていた。

この間、川崎重工は取引先との架空取引によって十数億円規模の裏金を捻出、原資に充てていたとみられる。大阪国税局の指摘により発覚し、2023年度有価証券報告書に税金費用として6億円を計上した。

だが、判明したのはあくまで国税局が調査した期間分にすぎない。実際には「数十年にわたる慣習だったのではないか」(防衛省関係者)との見方が強い。同ニュースを見た海自OBは、冒頭のように語った。

必ず受注が取れるうまい案件

現在、日本で潜水艦を建造できるのは、三菱重工業と川崎重工しかなく、隔年で交互に受注している。海自が保有する25隻の潜水艦のうち12隻が川崎重工製だ。

「必ず受注が取れるうまい案件」(重工幹部)で、受注額は1隻当たり400億円規模。修理も特定の事業者に委託する随意契約で2社が寡占している。

確実に受注が取れる案件に関して、なぜ癒着行為をする必要があったのか。「コミュニケーションの向上を図るための懇親がエスカレートしていったのではないか」(川崎重工)。

川崎重工・神戸工場の造船所では、修繕部が定期的に海自の潜水艦の検査・修理を行っている。この間、乗組員は造船所に隣接する川崎重工の宿泊施設「海友館」に寝泊まりし、数カ月間にわたって共同で修繕作業を行う。

閉鎖的な環境で親密になる中、修繕に使う工具のほか、商品券、生活用品、飲食などが多くの海自隊員に対して提供される癒着関係が築かれていったとみられる。なお自衛隊員倫理規程では、利害関係者から金銭、物品、供応接待を受けることを禁じている。

前出の海自OBは、「造船所では潜水艦に限らず艦艇乗員を接遇する文化があった。ただ、官製談合が社会問題になった30年ほど前にこうしたやり方は終わったはず。それが艦艇、中でも機密性が高い潜水艦では、過度な接遇文化が令和の今まで残ってしまったのだろう」と語る。

国税に指摘されるまで外部に漏れなかった

実際、事件は今年2月下旬に大阪国税局の税務調査により指摘されるまで外部に漏れることはなかった。防衛省が川崎重工から報告を受けたのは4月。その後、海上幕僚監部に一般事故調査委員会を立ち上げ、契約内容や規律違反の疑いについて調査を開始した。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください