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サイゼリヤ、優待の「突如廃止」を私が支持する理由 株主から悲鳴続出も、そもそも日本特有の制度だ

東洋経済オンライン / 2024年7月12日 17時20分

ただセグメントで見ると、日本はギリギリといった感じだ。

・日本:売上高1062億円、営業利益13億円
・豪州:売上高76億円、営業利益4億円
・アジア:売上高581億円、営業利益82億円

つまり、日本は薄利で、他の地域に稼いでもらっている状況だ。

日本では安売りと徹底したコスト管理が注目の的になっている。そして、純粋に私も同社の品質はすごいと思う。なぜあの価格であのクオリティかわからないほどだ。しかし、現実的に儲かっているかというと、日本市場ではそれほどではない。

日本の利益状況が単純に株主優待廃止を導いた、という単純な図式では考えていない。それに実際には同社の大株主はサイゼリヤ代表取締役会長である正垣泰彦さんだ。株主優待廃止から増配への動きは株主を利することになる。

私は仕事の関係もあって現在は、国内株式について個別株をもっていない。インデックスファンドやREITなどで資産の大半を占める。だから個別株式の株主優待は羨ましい……と思わなくはない。ただ、その理由で株主優待に反対はしていない。

株主は食事券ではなく、配当や株価の上昇を望めば良い

まず、株主優待は日本特有の制度だ。もちろんすべての国の株式市場は知らないが、日本でとくに重要視された制度ではある。ただ、私はこの株主優待制度は、特定株主への優遇措置であり、特定株主への利益供与ではないかと疑っている。

たとえば「1000株以上を保有する株主に『食事券』2万円分」とあるが、それ以上を保有していてもそれ以上のメリットがない。さほど大きくない株主をターゲットにしているのは明らかで、平等性にも反している。さらに食事券は現金同等物を配っているため、配当金と同様の効果をもつ。それであれば、やはり株主平等の原則にも反している。

また、たとえば一般論でいえば、現在では日本企業といえども、上場している企業の株主の大半は外国人であり食事券を使うこともできない。かつては株主の数を一定以上確保することが求められたから、その際の名残といえるだろう。しかし、現代ではその意義を失っている。

さらに、「株主優待がなくなってソンをした」と感じる人もいるだろうが、株主なので食事券ではなく、配当や株価の上昇を望めば良い。それによってはるかに大きなリターンが望めるだろう。

ちなみに、サイゼリヤが株主優待に充てる金額にたいして、全体の増配額のほうが大きい。だから、持ち株数によって有利か不利かは分かれるだろうが、株主全体としてはメリットがあると判断できる。

なお、株主優待がなくなって、さらに期待する配当もなく、株価の上昇もなかったとしたら、それは株主の権利として取締役を選んだり、株主提案を提出したりすればいい。あるいは保有株を売却して、他の株式に乗り換えればいいだけだ。

ちなみに、株主を騙すわけではないが、ある意味で「なんとなく経営に納得してもらう」ために株主優待を発行するケースがある。株主も目に見える「券」とかクーポンやらをもらったら納得してしまう、というわけだ。なかには自社と無関係な券を配っていたケースもあった。

しかし、実際には、企業とは株主のものであり、株主は企業を通じて自身の資産を最大化させようとする。そのとき、株主優待という皮相的なものではなく、純粋に経営の巧拙でドライに判断されたほうが良い、と私は考える。その意味で、サイゼリヤの株主優待廃止決断と増配について、賛同と支援をしたい。

坂口 孝則:未来調達研究所

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