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JR湖西線「強風・比良おろし」に翻弄された半世紀 運行安定性が通勤通学と新幹線連絡特急の課題

東洋経済オンライン / 2024年7月15日 7時30分

湖西線で高島市から京都駅まで通勤している運輸関係者は「安全運行は何より大切で台風や大雪の運休は理解できる。ただ、風での運休はもう少し工夫してほしい」と実感を込めて語る。家族が大学の入学試験を受けたときは、運行の不安定さを危惧して京都市内のホテルに泊まらせたという。台風や大雪による計画運休は年に1~2回なので、利用者も許容できる。だが、湖西線の強風による運休は、多いシーズンだと年に十数日あり、仕事や通学、生活への影響が大きすぎる。

湖西線で電車が止まると、運転区間の北限となる和邇駅、近江舞子駅の駅前ロータリーには送り迎えのクルマがあふれる。大津市と高島市を結ぶ国道161号は大渋滞し、いつ自宅に帰れるかもわからない。マイカーも代替手段にならない。

強風問題は湖西線沿線住民のライフスタイルに大きな影響を与えている。運行可否の判断とタイミングが難しいのは理解できるが、風が強くもないのに運転見合わせを続けるケースもある。

細かい情報発信をするなど利用者目線での配慮、運用が大切だ。JR西日本は強風予測の検証などの対策を進めており、今後の研究の深化が望まれる。

沿線人口減少への対応も課題に

湖西線の将来ビジョンを描くとき、JR西日本と地域との協働がカギとなる。

特に高島市の人口は、2005年の5.5万人から2024年は4.5万人に減った。2050年は2.8万人に急減するとの推計もあり、人口戦略会議は「消滅可能性自治体」に分類した。高島市の高齢化率は37.6%と県内市町でトップ。高校生など若年人口が急減し、それが市内各駅の利用の大幅減につながっている。北陸新幹線の並行在来線問題も影を落とす。地元としても定住人口の確保が喫緊の課題だ。

JR西日本は、高島市と提携して「おためし暮らし」キャンペーンを展開。自然豊かな地方で暮らしながら都市圏の職場へ行き来するライフスタイルの開拓を目指す。市は空き家などの斡旋をおこない、JR西日本はJR運賃や特急料金の最大40%をポイントで還元している。

また、2021年からは、おごと温泉駅に近い成安造形大学と湖西線アートプロジェクトを展開している。地域と学生とJRでワークショップを開き、駅で学生たちのアート作品が展示されている。

近年、JR西日本は、沿線との共生を目指して、地域の活性化や課題解決につながる取り組みを各地で展開している。地域に根差した地道な取り組みで湖西線の魅力向上へつなげることを期待したい。

森口 誠之:鉄道ライター

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