「無趣味は不幸」と思う人は幸せな老後を送れない 認知症専門医が進言する「本当に幸せな老後」
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 21時0分
脳神経内科が専門の医学博士で、老人医療・認知症問題にも取り組む米山公啓氏による連載「健康寿命を延ばす『無理しない思考法』」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けする。
長生きしても充実した人生とは思えない
私の診療所に通院している、とある高齢者の患者さんがよく言う口癖に、「こんなに長生きしてもねえ、何もいいことないですよ」というのがあります。
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90歳を過ぎて、1人で歩いて外来診療に来られており、そのこと自体、驚異的なことだと思うのですが、本人はそんな愚痴しかこぼさないのです。
この方以外にも、長生きしている方には愚痴が多く、「いやー、今日も充実した日ですね」と言う人はまずいません。
多くが、身体や家族の不満を私に漏らしていくのです。
医師として若くして亡くなった人をたくさん見てきました。そのため、90歳を過ぎて歩けることがどれほど素晴らしいか、実感を持ってわかるのですが、当人たちはなかなか自覚できないようです。
逆に言えば、これまで健康状態に大きな問題がなかったからこそ、現状に感謝をすることが難しいのかもしれません。
そう考えると、心身ともに健康で長生きするということは、なんとも難しいものに思えてきます。
何をしていいのかわからない
朝起きて、なんとも元気が出ない。そうして無理やり起き上がるも、ひざが痛くてたまらない。それでもなんとか起き上がってはみたが、別にやることもないので、しばらくぼんやりと庭を眺めている。
朝からいきいきと「今日何を楽しもうか」なんて考えられる高齢者はまずいないでしょう。多くの場合「今日は何をすればいいのだろう」、そこから毎日が始まるのです。
このように、生きる目的がはっきりしない高齢者の生活を見て、あなたはどう思うでしょうか。
おそらく、否定的に捉えてしまうでしょう。
しかし、「何をすればいいのかわからない」と考えられる余裕があるだけ、じつは幸福だとも言えます。
いくつかの病気を抱えた高齢者は、痛みで動けず、1人で外出することもできません。家にいるしかないということになります。
認知症が進行した患者さんなら、朝、デイサービスの迎えの車が来ます。それに乗って通所施設へ行き、あとはみんなと一緒に体を動かしたり、頭の体操をしたりしなければいけないのです。
つまり、「何をしていいのかわからない」という人は、選択の自由を持っているということです。
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