なぜ先生は学生を「怒れなく」なっているのか 教育現場を弱体化させている1つの「妄想」
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 14時0分
舟津:自由な環境であるからこそ、そうした動物性が表面化してしまうのかもしれません。ただ私は、拙著のスタンスとしても一貫している通り、それは今の若者に限った話ではないと思うんです。我々が大学生のときにも近いことは行われていた。かつての学生運動だって、ある種の動物性の解放だと考えることもできます。
鳥羽:そうだと思います。
変わったのは学生ではなく大人
舟津:ただ、我々の学生時代と変わったのは、周囲の受け取り方だと思います。乱暴な時代だと、怒鳴るとか殴るとか、動物性には動物性ではっきり「ダメだ」と対処するという手段が残されていた。それも一種のコミュニケーションだったわけです。
昨今の変化として、怒鳴るとか殴るはやめよう、まではよいと思います。ところが現代では、教員が動物性を出すことが人としておかしい、絶対に許されない、というプレッシャーがより強くなっている。対して子どもや若者には、清く育てば動物性を持たないんだ、みたいな妄想が強まっている気がしていて。結果的に、大人の動物性は徹底的に抑制され、若者の動物性は看過される。
鳥羽:とんでもない妄想です。ご著書では大学生が「PTAに言いつけてやる」と言ってきたとかいう呆れた話も紹介されていましたが、学生側は動物性を発揮し続けているのに、先生側はそれを封じ込められてしまうという不均衡が、教育現場としての学校を弱体化させている側面があります。
舟津:まさに。特異な例外ではあるものの、動物的に教員を罵倒する学生に対して、教員が応酬する動画がSNSで拡散されるといったことが実際に起きています。「さすがに学生がおかしいでしょ」という意見もありますけど、やっぱり教員や大学を責めたり揶揄する意見も多くて、それで責任を取らされるとなると、正直やってられない。
鳥羽:いろんな状況がありえますから一概には言えませんが、いま教員が非常に難しい立場に立たされることがあるのは確かだと思います。
舟津:それに関連して伺いたかったことがあって。鳥羽さんの著書や発信を拝見すると、基本的には子どもや若者にかなり肩入れしているように感じます。先ほどおっしゃったように、一人ひとりに向き合うことを惜しんではいけないというお考えに基づくのかなと。
ただ、味方であると同時にちゃんと叱るし、言うことは言うんだな、とも感じられたんです。でも、今はそうした「味方だからこそ、はっきり言う」ということが、両立できると考えられていない気がしていて。
怒られ慣れていない若者たちの実態
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