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「臭い」の言葉にも負けず、「し尿収集」職員の奮闘 「災害時のトイレ対策のスペシャリスト」になる

東洋経済オンライン / 2024年7月16日 11時0分

最近見る機会が減ったバキュームカーですが、工事現場の仮設トイレや、下水道が整備できない地区などで、し尿の汲み取りは必要とされています(写真:筆者撮影)

先日、次のような光景に出くわした。

【写真7枚】し尿収集作業に密着。職員は難しい作業を的確にこなし、気遣いのプロだった

登校途中の中学生の集団の横を清掃車が通ったとき、そのうちの1人が迷惑そうな口調で「清掃車、臭いな」と大きな声をあげて言ったのだ。

確かに臭いはした。しかし、社会に必要な仕事に従事している人に向かって大きな声で言う言葉ではないだろう。しかも「清掃車自体が臭い」のではない。「排出するごみが臭い」のである。

中学生の集団は清掃車を馬鹿にしながら過ぎ去っていったが、関わりを持ちたくなかったので注意しなかった。だがしばらくしてから、注意しなかった自分を後悔した。

活躍しているバキュームカー

ごみ収集以外の臭いが伴う業務といえば「し尿収集」があげられる。現在では水洗トイレが普及しているため、都市部ではし尿収集にあたる衛生車「バキュームカー」をそれほど見ない。

しかし何らかの理由で下水道が整備できない地区や工事現場の仮設トイレにはし尿収集が必要であり、バキュームカーが活躍している。そしてその業務に従事している方々も当然いる。

筆者はし尿収集業務に携わる公益財団法人東大阪市公園環境協会の前田真氏(36)と偶然知り合い、東大阪市でのし尿収集を見学させていただいた。

本稿では、し尿収集業務の実態と、そこに携わる方々が職業差別を受けながらも自らの仕事の価値を高めて乗り越えようとしている状況を述べてみたい。

【写真7枚】知られざる「し尿」の収集作業に密着した

東大阪市は大阪平野の東端にあり、「中小企業のまち」「ラグビーのまち」として知られている。都市化された地域であるが、生駒山には岩盤が硬く下水道が敷設できない地区が存在する。

その地区の世帯や、借家の大家が下水道への接続を見合わせている世帯が約1300も存在する。

これらの世帯や工事現場等に設置された仮設トイレのし尿収集を担っているのが、2012年に東大阪市が100%出資した外郭団体・公益財団法人東大阪市公園環境協会(以下、協会)である。7台のバキュームカーを駆使して、約1300世帯のし尿を月2回収集している。

し尿収集は汚れが伴う作業である。その汚れはし尿ではなく、むしろ家屋の裏までホースを伸ばしていく際につく土や泥によるものだ。もしし尿が付着してしまった場合はすぐに事業所に戻って着替える。

実際のところ過酷なのは臭いではなく、夏場に発生するハチだという。家屋の裏側で収集作業をしていると、アシナガバチやスズメバチに刺されてしまう作業員もいる。

過酷で難しい作業

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