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工学系出身者が「先進国最低レベル」日本の"暗雲" エンジニアを育てられない国が抱える大問題

東洋経済オンライン / 2024年7月16日 17時0分

ベンチャーの雰囲気で仕事ができる、そのうえ給与面も高く福利厚生も充実している、さらにブランド価値もある……というので、特に若いエンジニアに人気です。これによって、強い企業だけが優秀な人材を独占するという構造が生まれています。中小企業やスタートアップが優秀な人材を確保できないのには、こうした背景もあるのです。

また、IT業界における外資系企業への「移籍」も増加しています。とりわけ高給である、外資系コンサルティングファームへの人材流入が目立ちます。

たとえば、ある外資の大手ITコンサルタント会社では、毎月100人規模の中途採用を行っているともいわれています。ピーク時は年間で約1500人程度の社員増加があったというのは、その人気の高さを物語っています。

リクルートキャリアが2017年に発表した調査では、国内全体の転職求人倍率が1.90倍であるのに対し、外資企業が多いとされるコンサルティングファームでは6.17倍にも上ると報告されています。

IT業界は売り手市場であるため、待遇や条件がよいのが一因と考えられますが、優秀なITエンジニアはどんどん外資企業へ転職してしまう恐れがあります。

このような状況は、日本国内の企業にとって二重の打撃となっています。

ひとつは、新卒採用に力を入れ若手エンジニアを育成しても、数年で大手企業や外資系企業に流出してしまうリスクが高いこと。もうひとつは、即戦力となる経験豊かなエンジニアを採用するための競争が激化していることです。

企業が採用したエンジニアを維持するためには、給与や待遇の改善、キャリアアップの機会の提供、働く環境の充実など、より魅力的な条件を提供しなければなりませんが、資源が限られている中小企業にとっては簡単なことではありません。

しかしそれでも、日本企業は優秀なエンジニアを採用し維持するために、新しい戦略を模索し続ける必要があるのです。

日本はエンジニアが育ちにくい?

日本では、エンジニアの育成に対する取り組みも、十分とはいえない状況です。岸田首相は大意として「スタートアップ大国を目指す」という方針を掲げていますが、スタートアップはIT関連事業が大きな割合を占めているにもかかわらず、エンジニアを増やすための具体的な策はほとんどありません。

実際に日本は、27の先進国の中で、科学や工学の分野でキャリアを目指す学生の割合が最低レベルとなっています。

OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本は、STEM(科学、技術、工学、数学)コースを専攻した大学卒業生の割合で22位となっています。つまり、教育機関からのIT人材の供給も不足しているといえます。

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