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「リポビタンD炎上」背後に"男らしさ"の負の遺産 "女人禁制"からの急な方向転換が原因か【前編】

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 13時0分

この問題はリポビタンDでなくとも、すべての広告やCMでも起こり得る可能性は十分にあった。一方で同商品がこれまで築き上げてきた「男らしさ」というイメージを払拭しようとしている段階だったため、これで炎上してしまうのは少し気の毒にも思える(なお、炎上と言っても、ネット炎上の世界では”ボヤ”程度と言えそうではあるのだが)。

とはいえ、なぜこの表現を誰も止めなかったのかとは思ってしまう。どうして、このような時代錯誤な広告表現が生まれてしまったのか?

そこで、ここでは栄養ドリンクの広告表現の変遷を振り返りながら、今回の炎上騒動が起きてしまった背景を探りたい。

黎明期、栄養ドリンクCMはバラエティ豊かだった

時系列に沿って、栄養ドリンク(のCM)の歴史を振り返っていこう。

初めてキャップ付きの瓶のリポビタンDの販売が開始されたのは、1962年のこと。佐藤製薬の「ユンケル黄帝液」や大鵬薬品の「チオビタ・ドリンク」の発売も60年代後半からだ。

いわゆる高度経済成長だった当時、栄養ドリンクは今と違って「薬」だった(今は「医薬品」または「医薬部外品」)。そのため、今よりも堂々と「滋養強壮」や「疲労回復」と謳うことができ、70年代の栄養ドリンクの広告やテレビCMに出演していたのは王貞治やガッツ石松など現役スポーツ選手(リポビタンD)、あるいは俳優の若山富三郎(味の素の「アルギンZ」)や山城新伍(ユンケル黄帝液)だった。

汗を流すスポーツ選手はもちろんのこと、CMでクジラ用の銛(もり)を投げつける若山、そして「チョメチョメ」でおなじみの山城は実に男らしい……。というよりも、後者のコワモテ俳優の2人は雄々しすぎる。

ただ、同時期に中外製薬の販売していた「新グロモント」のCMでは八代亜紀が「アゴ出すな!(「顎を出す」とは「疲れがドッと出る」ことを意味する)」と歌い、アルギンZのCMでは俳優の中村雅俊と相撲取りの朝潮太郎(4代目)がきれいな海の広がる砂浜で、外国人女性をナンパしようとするなど、栄養ドリンクのCMはすべてが男らしさ一辺倒ではなかった。意外にも、バラエティ豊かだったのである。

また、サラリーマンに向けて発売されているのは確かなのだが、オフィスや電車内が舞台ではなく、美しい自然を背景に旬な俳優を起用しており、その点は今の清涼飲料水のCMと大差ない気も。まぁ、ジュースのCMに「バブルスター」の山城新伍が登場することはなかっただろうが……。

70年代、リポビタンDは「男らしいCM」へ

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