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「リポビタンD炎上」背後に"男らしさ"の負の遺産 "女人禁制"からの急な方向転換が原因か【前編】

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 13時0分

実際、リポビタンDが「ファイト、一発!」と言い出したのは1977年の勝野洋と宮内淳が出演する広告からだ。ここからようやく「男2人」というホモソーシャルな雰囲気も出てきたのだが、まだこの頃はランニングしたり、サイクリングしたり、走る機関車に飛び乗ったり、裸参りに参加したり……。いくつか怪しいのはあるが、当時はまだ「さわやか」路線だったのだ。

80年代に入ると、リポビタンDのCMは勝野を残して、真田広之や渡辺裕之とバディを組むようになり、トロッコに乗ったり、崖を登ったりと、徐々に世間がイメージする「筋肉隆々の男2人」の方向に強化されていく。

そして、1987年に勝野から野村宏伸に変わったタイミングで海外ロケが中心となり、映像の迫力も俄然増していく。「肉体疲労時の栄養補給・滋養強壮に」というキャッチコピーはあるものの、普通に生きていて崖を登ることはないため、同商品はきっと「相当ハードなときに飲むもの」とイメージされるようになったのだろう。

また、現在までに姿を消した栄養ドリンクはたくさんあり、CMや広告もその数だけ存在していたが、それらをひっくるめてもタフネスが明後日の方向を向いていたのはリポビタンDくらいだった。

栄養ドリンクとバブル、そして過労死

そんななか、80年代後半に登場した、リポビタンDの競合商品である「リゲイン」(第一三共ヘルスケア)が印象的な展開を見せる。

まず、1989年の流行語に「24時間戦えますか?」のキャッチコピーが選ばれる。さらに、「黄色と黒は勇気のしるし」のフレーズが印象的な、牛若丸三郎太(時任三郎)が歌う「勇気のしるし〜リゲインのテーマ〜」が、子どもたちをも虜にしたのだ。

これは「子どもたちまでもが同商品を飲んでいた」という意味ではない。このテーマ曲が、オリコンのシングルランキングでトップ10に入り、累計で60万枚以上を売り上げたのだ。

バブル経済もまっただ中のこの頃、過労死事件が急増している。労働問題を専門とする、弁護士や医師による「過労死110番」が始まったのは1988年6月のことなのだが、リゲインは良くも悪くも時代と寄り添っていた商品だったと言えそうだ。

そして、バブル崩壊後、栄養ドリンクのCMも、時代に寄り添うように、さらに変化していく。7月18日公開の後編「リポビタンD『時代錯誤CMで炎上』に見る栄枯盛衰 "女人禁制"からの方向転換が問題表現に?【後編】」では、次第に「リラックス」と「アガる」の2パターンに分岐するようになった栄養ドリンクCMを振り返りつつ、次第に時代にマッチしない飲み物に変化し、エナドリに追いやられるまでを追っていきたい。

後編で紹介する写真はこちら

千駄木 雄大:編集者/ライター

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