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「ビッグモーター」巡る損保と伊藤忠のすき間風 賠償保険などの引受要請に、大手は「時期尚早」

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 8時0分

そこまではよかったが、それに続く記述のトーンは、「われわれ伊藤忠がここまで経営にコミットすると言っているにもかかわらず契約の引き受けを謝絶する理由は何なのか回答を求める、という非常に上から目線の内容だった」(大手損保役員)という。

大手損保が自管賠の引き受けに慎重なのは、何も不正請求被害の回復といった禊(みそぎ)が済んでいないからというだけではない。

ビッグモーターの従業員約4200人をウィーカーズが引き継いだことで、法令違反のリスクが依然としてくすぶっていることも、取引を難しくしているのだ。

そもそもビッグモーターの保険金不正請求は、前副社長をはじめとした経営陣や工場長などの上層部からの圧力だけではなく、現場の作業員が半ば自発的に手を染めていた事例が少なくなかった。

工場の実態を知る損保ジャパンの関係者は、「誰かに指示されたわけでもなく、タイヤをわざとパンクさせたり、量販店で買ってきたカラースプレーで車両を下塗りして、そのスプレー缶を隠しもせず散乱させたりしている工場は1つや2つではなかった」と打ち明ける。

不正を排除できるのか

そうした不正に関与した、もしくは疑いがある従業員を、事業承継に際して完全には排除できておらず、今なおウィーカーズに在籍しているわけだ。伊藤忠は「承継前に作られた第三者調査委員会・賞罰委員会において、外部弁護士も入り、過去あった事案について調査した上で、懲戒解雇や相応の処分が下された。そのプロセスを経て、解雇されずに残っている社員は全員、ウィーカーズ側に承継されている。承継以降は、引き続き内部通報制度等を使いながら情報を吸い上げ、調査を重ね、適切に対処していく方針だ」としている。

「懲戒解雇や相応の処分が下された」というが、ビッグモーターの不正請求の実態を知りながら、証言書類の改ざんを指示するなど隠蔽行為を続けた、いわば“主犯格”の元板金部長が「いまだにウィーカーズに在籍していることも大きなリスク要因だ」と、大手損保の幹部は話す。

そうした心もとない状況にもかかわらず、自管賠などの保険取引を高圧的に迫る伊藤忠と、「現状をまったく理解していない」と憤りを募らせる大手損保。両者に吹くすきま風は、当面やみそうにない。

中村 正毅:東洋経済 記者

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