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リポビタンD「時代錯誤CMで炎上」に見る栄枯盛衰 "女人禁制"からの方向転換が問題表現に?【後編】

東洋経済オンライン / 2024年7月18日 12時0分

時は流れて、90年代後半。バブル崩壊から時間が経過すると、栄養ドリンクのCMも「もうひと踏ん張り」という具合にトーンダウンする。

「24時間戦えますか?」といっていたリゲインの第一三共ヘルスケアは、1999年に「リゲインEB錠」のCMソングとして坂本龍一のインストゥルメンタル楽曲「energy flow」を使用。「この曲を、すべての疲れている人へ。」というキャッチコピーで、視聴者の心を落ち着かせた教授のヒーリング・ミュージックは社会現象となり、リゲインは再び栄養ドリンク(厳密にいえば錠剤)のイメージを変えたのであった。

その一方で、キックボクサーのピーター・アーツの練習風景に迫ったエスエス製薬(当時)の「エスカップ」や、相変わらず無謀なチャレンジをするリポビタンDなど男らしいCMも健在で、栄養ドリンクのCMは「リラックス」と「アガる」の2パターンに分岐するようになった。

そして、2000年代に入るとその傾向はより顕著になる。というのも、各メーカーが「女性向け」の栄養ドリンクを販売するようになり、それらのCMでは筋肉隆々の女性たちが崖を登るわけではなく、家事や育児、仕事の合間に「一息つく」ときに飲むという内容のものが多かった。

さらに「愛情一本。」のキャッチコピーでおなじみの大鵬薬品の「チオビタ・ドリンク」は、かつて北島三郎がリポビタンDのマッチョマンのようにパラグライダーやヨットに挑戦するようなCMだったが、長い時間をかけてトーンダウンしていく。

2000年代、栄養ドリンクは「みんなのもの」へ

2007年からはロックバンド・くるりの楽曲が流れるなか、菅野美穂と平山浩行が夫婦役を演じるCMが7年近く続いた。大昔は「虚弱体質にチオビタ」と言い放っていたが、このCMによって「栄養ドリンクは働く男だけのものではない」というイメージを世間に持たせたのである。

そして現在、アリナミンの「アリナミンV」はスーツを着こなした反町隆史、ユンケル黄帝液はイチロー、久光製薬のエスカップは出社前の向井理をCMに登場させているように、ほとんどの栄養ドリンクはサラリーマン向けに作られている。

しかし、チオビタのCMでは水川あさみが母親役を演じている。そう考えると、栄養ドリンクのターゲット層はかつてよりも男女問わず、広がったといえるだろう。

今回の主題であるリポビタンDは、チオビタのように筋肉隆々の男たちを封印して、新たなターゲットにリーチしようとした。しかし、長年スポーツ選手やマッチョマンたちに頼ってきたため、すぐに多様性の時代にマッチしたCMを作ることができなかったのだ。

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