恐怖心がない?トランプのガッツポーズに危うさ 常人離れした度胸は無謀と背中合わせ
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 8時10分
暗殺未遂事件からわずか2日後、ドナルド・トランプ前大統領は、共和党大会開始から約2時間40分経過後、会場に登場します。大歓声が湧き起こり、歓声に応えるようにトランプ氏は何度もガッツポーズをします。
【写真を見る】銃撃から2日後、共和党大会に登場して拳を突き上げるトランプ氏
口角と頬は引き上げられ、唇を上下からプレスしています。これらは、誇りや自信があるときに生じる表情です。「銃撃を受けても、自分は大丈夫」「自分は強い」ということをアピールしようとしたのでしょう。
この大会中、トランプ氏は、ガッツポーズとこの表情を何度も見せます。観る者には力強さが印象付けられます。さらに何度も、幸福表情を見せます。「この調子で応援よろしく」と支持者に訴えかけようとしていたのだと考えられます。
また、支持者のスピーチに耳を傾けながら、眉の内側を引き上げる表情を見せる場面があります。スピーチに感動したのでしょう。この眉の内側が引き上げられる表情は、他者の心に共感を引き起こす働きがあります。
この表情を目にすることで支持者は、「トランプ氏こそ、私たちの気持ちをわかってくれる」と強く思うのではないでしょうか。「マッチョで優しい」というアメリカンヒーローの体現です。
過度な自信と恐怖の不足がもたらす危険
しかし、この「マッチョ」を手放しで喜ぶわけにはいきません。ストッパーが不足しているように考えられるからです。端的に言えば、トランプ氏の表情に恐怖がみられない、ということです。
銃撃からたった2日しか経っていません。常人なら多くの人々の前に身をさらすことに恐怖を覚えて当然といえる状況にもかかわらず、常人ならトラウマ体験になっても無理がない出来事に遭遇したにもかかわらず、トランプ氏は恐怖表情を見せません。
先の誇りや自信のシグナル以外にも、こうしたところにトランプ氏の力強さや度胸が見られるのですが、恐怖のなさは無謀と背中合わせでもあります。
例えば、私たちは将来自身の身に何が起こるか不安を抱き、懸念し、恐怖を感じるから保険に加入します。「自分は絶対に大丈夫」と自信満々に思っていたら保険などお金の無駄でしょう。私たちは、恐怖を抱くからこそ、恐怖が現実にならないよう、現実になったとしても被害を抑えられるようさまざまな予防策を立てるのです。
恐怖がなければ(まったくないと言わずとも恐怖心が不足していれば)、潜在的な脅威に注意が向きにくくなるのです。
ガッツポーズが命取りになった可能性も
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