恐怖心がない?トランプのガッツポーズに危うさ 常人離れした度胸は無謀と背中合わせ
東洋経済オンライン / 2024年7月18日 8時10分
先日の銃撃直後、シークレットサービスに囲まれながら会場を後にする場面で、トランプ氏は聴衆に向かって顔を見せ、ガッツポーズをしていました。シークレットサービスはトランプ氏に密着し、氏の頭部に手をかざしながら、必死で守っていましたが、もし銃撃犯による第2撃、第3撃があったとしたら、トランプ氏やシークレットサービスは、負傷していたかもしれません。
さらに時を遡ること、2018年6月。シンガポールで米朝首脳会談が開かれ、共同宣言にサインをする場面で、トランプ氏は「朝鮮半島の非核化は、本当にすぐに実現できる」と微塵の怖れも見せず、自信満々に述べていましたが、結局は実現しませんでした。
ゆえに、恐怖心を適度に抱けるというのは為政者にとって必要な資質なのです。
イプソスによる最新の調査によれば、調査対象者となった共和党の有権者の66%が、トランプ氏が銃撃を生き延びたことについて、「神の配慮や意思が働いている」と回答しています(なお、同質問に対する民主党有権者の回答率は11%)。
こうした支持者の考えによって今後トランプ氏が神格化されていくようなことが起これば、「神」側と「そうでない」側が意識化されます。そうでない側は敵になります。
こうした流れが生じた際、(トランプ氏の自信過剰さや支持基盤の熱狂、先月末に行われたバイデンvsトランプのテレビ討論会の結果などから考えると、そうなる可能性は十分あるでしょう)民主主義の価値が問われる事態となります。
思想家の内田樹氏は、オルテガ・イ・ガセットによる「敵と共存する、反対者とともに統治する」という民主主義の定義を一番納得するものとし、投票で多数を制した者が正しいわけではなく、少数派のほうが正しいかもしれないこと、公人とは、多数派の代表なのではなく、反対者を含めて組織の全体を代表する者のことであると述べます。
目下、イプソスの調査によると、7月16日時点の両者の支持率は、バイデン氏41%、トランプ氏43%と、銃撃事件後も今のところは拮抗しているようです。しかし、今後どうなるかわかりません。引き続き、注視していきたいと思います。
参考文献・Web
内田樹『サル化する世界』文藝春秋(2020)
https://www.ipsos.com/en-us/race-presidency-remains-unchanged-wake-assassination-attempt-trump <2024年7月17日アクセス>
清水 建二:株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役
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