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女性の方が「器用に噓をつける」脳科学的な根拠 とりあえず「かわいい」「ウケる」もその表れ

東洋経済オンライン / 2024年7月19日 16時30分

もっとも、私や多くの読者のみなさんが幼かった頃よりは、現在の日本社会の方がより個人主義的であり、空気を読まず、仮に集団から孤立しても許容されるようになってきたという印象はあります。

その背景として考えられるのは、やはり日本が先進国として成熟し、インフラも整って、日々の食べるもの、寝るところ、つまり衣食住にあくせくするような状況ではなくなったことが大きいのではないでしょうか。少なくとも都市部では、集団内の誰かを気にして、気遣いをしていかなければ社会のリソースの恩恵を享受できない、という時代ではなくなりました。

この状況に適応した世代の人々が、かつての「集団重視が当たり前」とされてきた世代の人々から、「今の若者は劣化した」などと否定的に捉えられてしまうのは、少し気の毒でもあります。むしろ、彼らのような若い世代こそが、今の日本の閉塞感を破ってくれるかもしれませんし、今後日本に起こり得る変化に対して、対応の幅を広げてくれる可能性を持っているかもしれないからです。

「みんなに合わせる」ための重要な機能、特に非言語コミュニケーション、文脈の背景、場の空気を読むのに使われる脳の領域は、左の側頭葉の一部である上側頭溝というところです。これは、言語を司る左側の上側頭回という場所の直下にあたります。

女性の方が空気を読むのが得意な理由

言語野と近接した場所にあるというのがとても興味深いところで、男性と女性では性差があり、女性の方が統計的な有意差のあるレベルで発達しています。つまり、女性の方が空気を読み過ぎて、身動きがとれなくなりがち、とも考えられるわけです。

これを現象として考えると、集団の空気を読むことの合理性を理解し、そのためなら嘘をつけるという器用さは、女性の方が比較的発達しているということになります。

ママ友たちの間では正直な意見を言いにくいとか、若い女性たちが、とりあえず同じ集団のなかでは、どんなことに対しても「かわいい!」とか「ウケる!」と肯定的に反応しておくことなどは、その表れかもしれないのです。反対に、若い世代では男性の方が集団の同調圧力から自由ということも言えるでしょう。

このように上側頭溝が発達しているがゆえの息苦しさもあるわけですが、多くの研究者たちの解釈によれば、女性が空気を読む能力を発達させた要因は、子育てにあるのではないかと考えられています。子育てを行う際、乳児からの非言語メッセージを受容するために、この能力が必要だったのではないかというのがその理由です。

言葉を発することのできない乳児は、顔色や泣き方などによって意思を伝えているため、それを高い理解度で受け取る必要があるわけです。

ただ、その能力の高さによって、同性同士のコミュニケーションや、自分自身に対するネガティブなメッセージを受容しやすくなるために、生きづらさを感じているとするなら、女性に降りかかってしまいがちな苦労だと言えるかもしれません。

中野 信子:脳科学者

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