「アニメ頼りの日本映画」がアジアで直面した現実 アジア最大規模のジャンル映画祭で見えた課題
東洋経済オンライン / 2024年7月19日 13時0分
また、ビジネスミーティングに関して、藤田プロデューサーは「韓国や台湾、東南アジアのいろいろな国のポスプロ会社(注:撮影後の編集作業を行うスタジオや制作会社)やパブリックファンドから興味を持ってもらえました。この企画なら、この国の、この会社にアプローチするといい、などのアドバイスももらえたので、これからどんどん話をしていきたいです」と意気込んだ。
受賞は逃したものの、カルチュア・エンタテインメントの小室直子プロデューサーによる企画『Anthurium in the Dark Night』も、ハイコンセプトで実験的な企画ながら、広く関心を集めていた。
小室プロデューサーは「今回はリサーチ的な側面があり、リアクションによって内容を調整していきます。日本固有の文化でないと作れない作品ではないので、一緒に作ろうというパートナーを探していきます」とこの先を見据えた。
VIPO・統括部長兼グローバル展開事業部長の森下美香氏は、日本からの3組のうちの2組の受賞を異例だと話す。
「既存の映画会社の作り方とは違うやり方で映画を作ろうと考えていて、まったく新しい世代が出てきていることを感じます」(森下氏)。養成プログラムへの日本からの参加も踏まえて、ここ数年の若い世代の台頭を実感しているようだ。
また、アジアのなかの日本映画界の立ち位置について「最近はインドネシアやフィリピン、ベトナム、カンボジアなどが、勢いがあります。国際共同製作という観点では、日本はいちばん遅れています。ただ、これまで国内しか見ていなかったのが、国外に出ていこうと意識しはじめ、それが実際に行動に現れているようにも見受けられます。ちょうど潮目が変わってきているようです」と森下氏は指摘する。
これまでにも黒沢清監督や藤井道人監督をはじめ、日本映画の国際合作は少なくはない。ただ、映画業界のほんの一部にすぎず、大手映画会社の動きとしては鈍かった。それが変わりつつあるようだ。
本映画祭の映画産業フォーラム講師として日本から招待されていた映画製作者の李鳳宇さんも「昨年くらいから日本の映画業界も真剣に海外戦略を意識し始めている」と語る。
海外からの資金調達にトライしなかった
そうした背景には、日本映画界がそうしなければ生き残れない状況にあることがある。本映画祭で企画ピッチングに初めて参加した吉田監督は、日本映画界が世界に進出する意義をこう語る。
「国内だけで十分な資金を調達できる時代はもう終わり。だったら、手持ちの予算にあわせて企画をスケールダウンするのではなく、やりたいことをアピールして、国内だけではなく、海外から資金調達すればいい。いままで日本はそこにトライしてきませんでした。
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