昭和世代には懐かしい「ヘチマ」見直される"良さ" 静岡県浜松市の市民団体が復活・普及に奮闘中
東洋経済オンライン / 2024年7月20日 11時30分
左側から順にプロサーファーの三浦涼さん、浜松市でヘチマに関するプロジェクトを運営する市民団体代表の五明三佳さん、プロジェクトサポーターの和田ゆうこさん、団体副代表の石田渚さん、元プロサーファーの森本直波さん(写真提供:浜松へちま・ミライ)
昭和世代にとって「ヘチマ」と聞けば、「学校で育てた」など懐かしく思い出し、ヘチマスポンジ(ヘチマたわし)を連想する人もいるだろう。
【写真14枚】昭和20年代のヘチマ加工場の風景。ヘチマは山積みで、日用品の素材として重宝されていたのがよく分かる。
しかし、Z世代の若者や子どもたちは、ヘチマが植物の一種だとは知っていても、スポンジなどの日用品に活用できるとは思いもよらないのではないか。
高度経済成長期に安価なプラスチック素材の日用品が普及し、農家の多くはヘチマ栽培をやめ、収益性が高い農作物に転換した。今の若者たちが生まれる前に日本のヘチマ産業は衰退していたので、知らないのも無理はない。
浜松の「ヘチマの歴史」を次世代へ
静岡県浜松市内の小高い丘の上に、天下人となった徳川家康が築いた浜松城が建っている。約120年前の浜松は、国内有数のヘチマ産地として知られていた。
ヘチマはかつて、スポンジ、スリッパ、背中を洗うボディータオルなどの日用品の素材として使用されていた。また、アメリカやイギリス、ドイツ、フランスなど欧州向けに、主に船舶重油の濾過(ろか)や機械器具類の洗浄用素材としても輸出されていた。
現在、浜松市内ではヘチマスポンジの加工会社は確認できた限り1社のみで、そこでは海外から輸入したヘチマを使っているという。
そんな同市でヘチマ栽培を復活させ、以前のようにスポンジなどに活用し、環境保全につなげようという市民団体の活動に賛同の輪が広がっている。
【写真】かつては日用品の素材として重宝されていたヘチマ。小学校で栽培した思い出がある昭和世代も多いだろう。昔の様子を残した古い資料や浜松市で行われている取り組みの様子など(14枚)
「うみそら そらいろ 浜松へちまプロジェクト」を運営する市民団体「浜松へちま・ミライ」代表の五明(ごみょう)三佳さん(53)は今春、かつて世界一の品質と称されたヘチマの復活と普及に向け「浜松へちまプロジェクト」を立ち上げた。
地元のエコ住宅関連企業で広報を務めるかたわら、休日は活動のために仲間と市内を奔走している。プロジェクトの活動費は、主に市の補助金と自費で賄う。
プロジェクトは、ヘチマを栽培して緑のカーテンを作ったり、ヘチマスポンジの使用を通じて環境意識を高めるとともに、浜松のヘチマの歴史を次世代につなぐことが目的。
当初はヘチマの栽培者として30団体と個人100人、ヘチマスポンジの使用者として300人を集めることを目標とした。それが地元の新聞やテレビで紹介されると反響があり、立ち上げからわずか3カ月ほどですべての目標をクリアした。特に団体部門には70団体から応募があり、目標の2倍超に達している。
目を丸くする子どもたち
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