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100億の貢献?糞虫の聖地「奈良公園」の奥深き裏側 驚異の自然サイクル!莫大な経済効果生む陰の掃除屋

東洋経済オンライン / 2024年7月20日 10時30分

―奈良公園以外でも、こうした糞虫の活躍事例はあるのでしょうか?

はい。例えばオーストラリアで国の窮地を救った話が有名です。オーストラリアには、カンガルーなどのフンを食べる糞虫が生息していました。しかし、それらの糞虫は大きなフンの処理が得意ではなかったため、人間の持ち込んだ牛や羊など大量の家畜たちのフンは分解しきれず「糞公害」が社会問題化したことがありました。そのとき、1968年から1982年にかけて、国が主導で糞虫を導入しています。

ニュージーランドでも、家畜のフンが社会問題となり民間が主導となって糞虫を導入するなど、世界のいたるところで糞虫は活躍しています。

しかし一方で、外来種を持ち込むということに関して、生態系的な観点から疑問視する声もあります。

フンをほじくる奇抜な観察会が魅力

―中村さんの説明を聞いて、糞虫のすごさを知り興味を惹かれました。

糞虫の観察会を定期的に行っているので、もっと知りたい方にはぜひ参加いただきたいですね。フンを餌にする昆虫の採集ということもあり、一風変わった観察会ですが、いろんな方に来ていただいていますよ。

―どんな観察会をしているのでしょうか?

基本は奈良公園に落ちているフンを割りばしや木の枝などでほじくり、そこで見つけた糞虫を観察するという内容です。

今年は自身で主催する「親子糞虫教室」を始めてみました。採集と標本作りの2つからなっていて、月に1、2回ほど奈良公園周辺の糞虫を採集しに行き、捕まえた糞虫を使って、月にもう1、2回ほど糞虫館で標本作りをするという内容です。

こうした継続的な観察会を行い、顕微鏡を用いて「これはなんていう糞虫だ」と種類を同定し、1年間で30種類を見つけることを目標にしています。

糞虫は観光資源になる

―今後の展望などはありますでしょうか?

糞虫は、奈良の魅力を伝える観光資源になると思っています。そこで、人材育成ではないですけど、奈良公園の糞虫の解説や観察会のガイドができる方が増えてくれればと思っています。

僕自身、小さい頃から糞虫の魅力にハマったこともあり、「糞虫の聖地である奈良に、糞虫の博物館を作りたい!」と思い、奈良公園の近くに糞虫館を作りました。だから糞虫についてもっと知ってもらう機会が増えるとうれしいです。

奈良に都ができて約1300年。自然豊かな奈良公園では、今も1トンものシカのフンが糞虫によって分解され続けている。多くの人が行き交う観光地、その地面では我々の気づかないところで自然のサイクルが日々繰り広げられていた。

そう思って奈良公園に足を運べば、シカだけでなく、地面に落ちたフンにも思わず目がいってしまいそうだ。

今回は、ならまち糞虫館の館長である中村圭一さんに、奈良公園がシカのフンだらけにならない秘密について話を聞いてきた。次回の記事では、“フン虫王子”こと中村さんがいかにして糞虫の虜になったのか、そして個人でならまち糞虫館を立ち上げるに至った背景について紹介する。

参考文献:中村圭一『たくましくて美しい糞虫図鑑』、創元社

ギャラリー

丹治 俊樹:日本再発掘ブロガー・ライター

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