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エンジニア人気低迷の元凶「多重下請け構造」問題 安月給で早朝から深夜まで働き、家に帰れない

東洋経済オンライン / 2024年7月23日 18時0分

その結果、エンジニアの技術力が低下するわけです。

安い労働力を外部から得ようとする

このように、日本の多くの中小企業はIT企業というよりも人材派遣に近い形になっているのですが、大手企業もコアな人材は抱えつつ、安い労働力を外部から得ようとするのが一般的です。

海外では、日本のような多重下請け構造は見られません。この多重下請け構造は、江戸時代の大名の関係性のようです。元請け会社が親藩にあたり、二次請けが譜代大名、三次請けが外様大名といったところでしょうか。これも日本的な文化のひとつなのかもしれません。

多重下請け構造の下位の企業は、思考停止状態に陥り、今までやっていたことをただ続けているだけ、という場合が多いようです。高齢化が深刻で、50代や60代の従業員が大半という企業も少なくありません。

そのような企業は新しいものを取り入れる意欲に乏しく、現状維持を選ぶ傾向にありますが、DXやIT化が進む現代においては現状維持という姿勢で安泰な状態をキープできるのか、疑問が残ります。

実際に私が日本のIT企業の方と話していると、事態の深刻さを痛感します。

ほとんどの方は「優秀なエンジニアが採用できない」と嘆いておられますが、特によく耳にするのは「まだ学習したばかりで、ほとんどプロジェクト未経験の人しか紹介されない」、あるいは「経験者でも60歳以上の人しか紹介されない」という話です。

現に、80万円から100万円程度のコストでエンジニア派遣を利用したとしても、特に有名な会社でない限り、優秀なエンジニアが派遣されることはまずありません。

これは企業にとっては嘆くべき状況ですが、日本のエンジニア派遣会社にとっては有利な状況といえます。一方で発注側は、この不利な状況を理解していてもいなくても現状維持を選び、あくまで日本人を採用することにこだわっているのですから、おかしな話ではないでしょうか

スタートアップが現状を打破するカギ

こうした事情から、企業は日本人のエンジニアにこだわらず、海外のエンジニアを採用したほうがはるかに効果的だと思いますが、海外エンジニアを派遣する会社は少なく、いまだに大きな壁となっています。

こうして日本企業は海外のエンジニアの採用に踏み出せず、思考が停止してしまっている状況に陥っているわけです。

しかし、海外の優秀な人材を、日本人と同じかそれより安いコストで採用すれば、業務効率は大幅に向上します。日本企業の大半は、新しいものを避けて現状維持を続けようとしがちですが、新しいものを取り入れる文化が根づけば、日本のIT業界が大きく変わるかもしれません。

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