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「平気でウナギを食べる人」が知らない資源の実態 ウナギをいつまでも食べ続けるためには

東洋経済オンライン / 2024年7月24日 11時30分

現時点ではそれよりも罰則が甘く、これでは犯罪の抑止力も限定的です。日本は、漁業に対する罰金が非常に低く設定されています。皮肉なことに、欧米をはじめ資源管理に厳しくて水産業を成長産業としている国ほど、規制も罰則も厳しいです。

次のグラフは、ニホンウナギの稚魚の池入れ数と稚魚の取引価格の推移を示しています。上限を年間で21.7トンに制限し、国産で足りない部分を輸入で補っています。2003年にキロ16万円だった単価は2024年では250万円と10倍以上で高止まりしています。

このため、激減した資源をめぐって国内外で密漁・密輸などが起きています。そこで不正のための対策として、罰則を強化しようとしているわけです。

都府県からの報告量よりなぜか多いウナギ

次のグラフは、水産庁の算出数量(推定)と都府県の採捕報告数量の差を示しています。毎年差があり、常に報告量より実際の算出量が多くなっていることがわかります。

その差が不透明流通として問題になっています。差が出る理由は密漁や闇取引といった類のものであるのが実情なのでしょう。水産庁の資料にも、シラスウナギ流通の実情について「無許可による採捕(いわゆる密漁)」という表現が出ています。

必ずしもウナギだけではありませんが、魚が減った原因としてよく出てくるのが「海水温上昇」です。もちろん海水温は資源量に大きな影響を与えます。しかしながら、それが乱獲放置の免罪符のようになってしまうと、科学的根拠による資源管理の本質がどんどんずれてしまいます。

ニホンウナギの生息海域の北限は青森県とされてきたのに、北海道にウナギがいた。こういった記事を見るとウナギが実は海水温上昇で北上し、北海道にたくさんいるのではないか?と想像してしまう方がいるかもしれません。しかしながら、残念ながらそういうことにはなりません。

記事にもありますが、北海道では過去に、成長したウナギが獲れたという記録がわずかにあるそうです。珍しいところに珍しい魚が見つかると、あたかもそこに魚がたくさんいるのでは、といった「想像と錯覚」が起きやすくなります。

確かに、ある程度のウナギが生息しているかもしれません。しかしながらその数量は、漁業を形成するような数量にはなりません。また仮に漁ができたとしても、数年で獲り尽くされてしまう数量にすぎないのです。なおせっかく増えても、トレーサビリティがしっかりしていません。密漁を含め、資源を獲り尽くしてしまう制度は、変えねばならないことを付記しておきます。

ウナギ資源を回復させるには?

このままでは、ウナギの資源が回復することはありません。国産だけでなく、他国の資源も食べ尽くしてしまいます。必要なのは科学的根拠に基づく数量管理を行うこと。そして厳格なトレーサビリティで、違法なウナギの価値をなくして流通させないことです。

全量とはいかないでしょうが、かば焼き製品なども含め、DNA検査を行って罰則を強化することも必要です。そうすれば輸入されるはずがない、ヨーロッパウナギなど違法ウナギの輸入をある程度防げます。

そして社会が、ウナギがなぜ消えていくのか? 魚がなぜ消えていくのか? その本当の理由を理解することです。

片野 歩:Fisk Japan CEO

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