MUFGが役員21人処分、「法令順守」置き去りのツケ 収益強化の一方で、現場ではコンプラ軽視が横行
東洋経済オンライン / 2024年7月24日 7時2分
7月19日、東京・丸の内に立つ三菱UFJ銀行本館。建て替えを控え閉館するはずだった建物に現れたのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規社長と、三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取、そして三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小林真社長。銀行と証券会社の間で顧客情報を違法に共有していた問題を受けて、国内最大手の金融グループのトップがそろって頭を下げる異様な光景が広がった。
【写真】深々と頭を下げて陳謝する三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規社長、三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小林真社長
「お客様の多様なニーズに応えるため、グループ会社間での連携を進めてきた。だが、法令を正しく理解し、順守する意識の浸透が十分でなかった」。MUFGの亀澤宏規社長は、違法な情報共有の原因をこう説明した。
同日発表された社内処分の対象者は、現役の社長・会長を含む役員21人。金融庁に同日提出した業務改善計画に沿った再発防止策も公表した。
行きすぎた「銀証連携」
問題となったのは、グループ内の銀行と証券会社による行きすぎた「連携」だ。
銀行と証券会社は本来、顧客情報の共有が法律で厳しく制限されている。だが、MUFGでは顧客の同意なしに銀行と証券の間で非公開情報を共有したり、銀行が融資する条件として証券会社による引き受け業務の受託を提示したりしていた。
発覚を免れるために、痕跡が残りにくい電話でやり取りをしたり、情報共有の事実を社内システムに登録しなかったりといった事例もあった。
MUFGは近年、グループ内の銀行や証券が連携することで収益の増大を図る「グループ総合力の強化」を進めてきた。しかし、その号令の裏で、現場ではコンプライアンス(法令順守)の軽視が横行していた。
その一例が「収益ダブルカウント」の問題だ。MUFGには、銀行が証券会社に顧客情報を融通し、証券側で成約に至った場合、銀行側の収益としても評価する制度がある。「銀行員が銀行の商品に、証券の営業員が証券の商品にだけ固執するのではなく、顧客に最適なソリューションを提供する」(亀澤社長)ことが狙いだ。
だが、一部の社員が成績稼ぎのため、本来は銀行を経由する必要がないにもかかわらず、形式的に銀行から証券へと顧客の同意なしに情報を横流しして収益を落とす事例が、複数件見つかった。
リスク管理部門によるモニタリングも不十分だった。これまでは成約案件を中心にモニタリングを行っていたため、成約しなかった案件には監視の目が届きづらかった。実際、今回の行政処分には、法令違反を犯した揚げ句に引き受け業務を受託できなかった案件が含まれている。
より重い処分となった三毛兼承会長
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