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RIZAPが業績不振から巻き返すには何が必要か マーケティングの大転換「カスタマーサクセス」

東洋経済オンライン / 2024年7月25日 9時0分

考えてみれば、当たり前なのである。広告を打つことではなく、製品・サービスを磨くことこそが、企業活動の本質だ。企業の評価は広告によってではなく製品とサービスそのものによって決まるのが自然なこと。広告の作り出すイメージは現実の前に脆いが、実力ある製品・サービスが生み出す経験価値は、現実そのものだからだ。

広告で顧客を獲得する焼き畑農業を止めよ

本業を磨かず、広告によってのみ維持される事業は、いわば焼き畑農業のようなものである。新しい土地を見つけては焼き払い、田畑として利用し、土地がやせ細ればまた次の土地を追い求める。そうして、次の土地へ次の土地へと、場を改め続けていく。

なぜ、事業がやせ細るのかといえば、それは製品力・サービス力が弱いからだ。製品・サービスに満足しないから、顧客は取引を継続しない。放っておけば右肩下がりになる。そんな事業を維持したり、発展させようとしたりすれば、通常よりもより一層の広告費用が発生する。かくして、製品・サービスの競争力が弱いと、その分だけ広告費用がかさみ、儲かるべき事業も儲からなくなってしまうのである。売り上げに見合わない広告費用が発生するのは、とどのつまり、製品競争力が十分でないことを意味している。

スターバックスやアップルが目指す方向は、その逆である。製品競争力が高ければ、顧客は次もリピートしてくれる。広告投資をしなくとも、客足は絶えることなく、評判を見聞きして新規顧客も着々と積み上がっていく。広告費が少なくなれば、その分利益が大きくなり、それを原資として製品・サービスの競争力を磨くことができる。

製品・サービスの競争力を軸に、高い顧客満足を実現しながら、高い顧客継続率を土台に成長するビジネスモデル。
製品・サービスの弱さを広告費で補いながら、顧客離脱分を上回るような集客によって成長するビジネスモデル。

どちらが、善であるか。そして、ライザップ(チョコザップ)が目指すべき未来はどちらか。そう問われれば、皆さんももう答えは見えているのではないか。

静かなマーケティング革命「カスタマーサクセス」

この考え方こそが、21世紀のマーケティング界で静かに進行した大きなパラダイム転換である。

20世紀までのマーケティングは、右肩上がりの経済成長の中でいかに新規顧客を獲得していくかだった。マクドナルドもコカ・コーラもロレックスも、成長していくために積極的に広告を打ち、どんどん新規顧客を獲得し続けるマーケティングを行っていた。

だが、そんな時代は過ぎ去った。顧客は広告のクリエイティブやインスピレーションよりも、製品・サービスの持つ本質的価値を重視するようになった。新規顧客の獲得に躍起になっていたかつての企業は、現代では既存顧客を満足させることに力点を置くようになっている。いや、顧客満足(カスタマーサティスファクション)、などという生ぬるい話ではない。企業は顧客からお金をもらい、時間をもらい、その人の人生で叶えたいことのためにエージェントとして働いている。企業が担っているのは、顧客の人生における成功、「カスタマーサクセス」なのである。

中川 功一:経営学者、やさしいビジネスラボ代表取締役

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