サイゼ株主優待廃止を歓迎した投資家の意識変化 一部投資家のパニック売りを吸収して株価は急反発
東洋経済オンライン / 2024年7月25日 9時30分
サイゼリヤが7月10日、株主優待制度をすでに実施済みの2023年8月末分をもって廃止すると発表しました。サイゼリヤ株は優待銘柄として人気で、個人投資家の間では激震が走っています。
今のところ同社に追随する他企業の動きはありませんが、株主優待制度はこれからどうなるのでしょうか。
機関投資家と個人株主の利害が対立
現在、日本では上場企業の4割に当たる約1500社が導入しているとされます(証券会社の集計で、正確な数はわかりません)。一方、海外には株主優待制度はほとんど存在しません。まったくゼロではないようですが、日本に固有の制度と言われます。
なぜ、海外で普及していないかというと、株主優待は「株主平等原則」に反するからです。
サイゼリヤのような外食チェーンの場合、機関投資家や店舗がない地域に住む個人株主は、食事優待券をもらっても利用できません。その場合、チケット屋で換金できればいいですが、できなければ紙くずになってしまいます。
また、多くの実施企業が、株主数を増やすために保有株数の少ない株主を優遇しています。たとえば、吉野家ホールディングスは、保有株数に応じて500円の食事優待券を株主に配布しています。
100株以上:4枚
200株以上 :10枚
1000株以上:12枚
2000株以上:24枚
このように株主優待制度は、保有株数が少ない個人株主を優遇し、保有株数が多い機関投資家を冷遇しており、株主間で不公平です。そのため、外国の機関投資家が増えた2000年代から、株主優待制度を廃止する企業が出始めました。
一方、2022年から上場維持基準が変更になり、上場企業は株主数を増やす必要に迫られました。プライム市場800人以上、スタンダード市場400人以上、グロース市場150人以上という基準を満たすために、新たに株主優待制度を導入する企業が増えました。
このように、現在は、株主優待制度の廃止を求める外国の機関投資家と新設・継続を求める国内の個人株主・投資家がせめぎ合う状態になっています。
一部の業種にとって株主優待は一定の合理性
今回、サイゼリヤは、「株主の皆様への公平な利益還元のあり方という観点から、慎重に協議した結果、配当による利益還元に集約することが適切であると判断し、株主優待制度を廃止することといたしました」と廃止の理由を説明しています。株主平等原則を意識しているようです。
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