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18、19歳成人でも喫煙・飲酒禁止はなぜ正しいのか 「成人なら喫煙や飲酒も自己責任」に危うさ

東洋経済オンライン / 2024年7月25日 10時0分

未成年者がなぜ保護されるのかといえば、法律論では制限能力者とされているためだ。行為能力を欠くために、単独で行った法律行為を事後的に取り消すことが可能とされている者のことだ。

簡単に言えば、自分がなした法律行為の結果に対して責任を持てる能力があるとみなされるか否かということだ。それを18歳で認めているのだから、喫煙・飲酒も自己責任で判断すればよいという考えもある。

成人に対しても選択権を制限する必要性

しかし、そもそも成人(大人)なら、適切な判断を行えるのかという問題がある。適切でないとしてもそれは自己責任である、不利益やリスクが生じても甘受すべきという考えがある一方で、射幸心を煽るものや明らかに生命の危機や健康に有害のあるものに対する成人の選択権を制限する法制度や施策があることも理解する必要があろう。

例えば、カジノを含む統合型リゾート(IR)計画に対する反対の声があるが、その理由の一つにギャンブル依存症の問題がある。ギャンブルは未成年者に対しては禁止することは当然として、大人に対してもそうした機会があることを問題視する考えだ。

パターナリズムという概念がある。簡単に言えば、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益になるようにと、本人の意志に反して行動に介入・干渉することだ。

ある人の行為が他者(社会)に悪影響を与える場合には政府の規制は正当化されるが、他者への影響がない場合は個人の自由で政府が介入すべきではないという立場はパターナリズムを批判する立場となる。

たとえば自動車のシートベルト着装義務も、スピード違反や飲酒運転と違ってパターナリズムだという指摘があるが、違反行為とされている。

法的能力と身体への影響を分けて考える

タバコや飲酒については成長期の子どもや若者の身体形成に悪影響を及ぼし得ることが指摘されている。法律行為の能力を観点に規定されている民法の成人年齢が2歳引き下げられたからと言って、連動させるべきではないと筆者は考える。

また、今回の宮田選手の行動が他者への影響を及ぼしうることも指摘したい。報道によれば喫煙は都内のプライベートな場所、飲酒はトレーニングセンターの宿泊棟とされているが、宮田選手は女子体操代表5名の主将だった。

他の4名は全員10代で、19歳1人、18歳1人、未成年の16歳2人だ。また体操協会の行動規範には「日本代表チームとしての活動の場所」では20歳以上でも飲酒禁止、喫煙も原則禁止となっている。主将が合宿所で違法・規律違反行為をすれば他の選手への影響も懸念される。

国の代表として選ばれた女子体操の5名の主将を務め、未成年者とともに合宿活動をしていたなかでの違法、行動規範違反行為は、宮田選手が判断能力を有するとされる「成人」であることからも批判されるべきものである。残念で不幸なことであるが、代表辞退は致し方ないというのが筆者の見解だ。

細川 幸一:日本女子大学名誉教授

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