西武労組、ストを決断した社長との対決の舞台裏 寺岡・労組委員長「井阪社長は腹を割って話すことがない」
東洋経済オンライン / 2024年7月26日 19時0分
これまでろくな情報提供もしていなかったにもかかわらず、複雑な内容の会社売却をいきなり「飲み込め」「認めろ」と言われても納得できるはずがない。
セブン&アイ経営陣の口ぶりは、そごう・西武は実質的にもう倒産している企業だと言わんばかりだった。このディールを進めなければ会社が潰れる、3000億もの負債を抱えて生き残っている流通小売業はほかにないと畳みかけ、会社を売るか倒産(清算)するしかないと二者択一を突きつけ、判断を強いる。
しかし、それはおかしいというのがわれわれの考えだった。ヨドバシカメラにだけ有利な契約を慌てて結ぶのではなく、交渉を延期し、再考したり、百貨店事業の継続のためにもっとふさわしい交渉相手を探すこともできるはずだ。
「素朴な疑問ですが、井阪社長がそう仰るのであれば、なぜ当社の経営陣はみな賛成してその事業計画を進めようとしないのですか。数の論理で取締役を送り込まなくても、経営の皆さんのなかで話し合いをして、今回の事業計画を進めればいいのではないですか。
当社の経営、田口社長はじめ十分にまだ納得しておらず、不安があるからこそ進められない。前任の林社長はそういったこともあって、声を上げたら解任されたというなかで、株式譲渡日の期限が存在していて、クロージングするために取締役を送り込んでいるとしか思えません」
「そう思うのは勝手ですが、それは事実とは異なります」
「そう思うのは勝手……では組合員の前で、そう話してみてください!」
声を荒らげる後藤。本来、こういった協議の場では感情に任せて発言すれば負けだ。売り言葉に買い言葉になるだけで、生産的な議論にはならないからだ。
組合員の怒り、不信感はこんなもんじゃない
しかしこのときばかりは、そんなことはどうでもいいと思っていた。むしろいままで大人しく対応しすぎていたのかもしれない。後藤の言葉は確かに感情的だが、組合員の怒り、不信感はこんなもんじゃない。
後藤、もっと言え! 感情的に訴えろ! 最後は俺が引き取るから――
「思う、思わないではなくて事実の話をしています」
井阪社長は後藤の追及に真正面から応えようとせず、自分の言うことだけを言うという態度だった。四谷の本社で向き合ったときにも感じたことだが、井阪社長はどこまでいっても「腹を割って話す」ことのない人だ。
この日の交渉を締めくくるにあたり、委員長として言うべきことは言っておかなければならない。
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