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真面目な人ほど職場で「闇堕ちしてしまう」真因 「倫理感の欠如で不正が起きる」への違和感

東洋経済オンライン / 2024年7月26日 17時0分

新聞に掲載されていたインタビューなどで状況を補足すると、何かあるごとに、「自分で考えろ」が職場の頻出ワートだったと言います。

これも「わかるわかる」という方が多いのではないでしょうか。

無茶な開発スケジュールを掲げられ、現場の作業単位では、無理でどうしていいかわからない状態が無数にあったものと思われます。そこで、上司に相談するも、忙しいうえに、そもそも人間業を離れた目標値を達成する術が上司にあるわけでもなく、こう言い放つ。

「自分で考えろ」

不正はもちろんひどいのですが、組織運営を専門とする私からすると、現場の社員が不正を働く以前にとても「気の毒な状況」であったのだろうと思えてなりませんでした。

「倫理感」の問題ではない

さらに特筆しておきたいのは、この報道に際して、朝のニュース番組でコメンテーターが「社員の倫理観のなさが……」などと話されていた点です。

社員個人の倫理観の問題でしょうか?

悪人が悪事を働いたのでしょうか?

倫理観があっても、「生産性」という言葉がさも正しく、それ以外は悪だと思い込まされたということではないでしょうか。検査担当の社員は嬉々として、検査車を改造したり、データをちょろまかしたりしていたわけではないのだと思うのは私だけでしょうか。

調査委員会のこんな記述からも、推察されます。

「問題が起きても現場で抱え込んでしまう状況が生じていた」

不真面目な社員が、自らの利益のために適当なことをした、のでは決してなさそうなわけです。

真面目な社員が、言われたことに真面目に対応した結果、悪事に手を染め、ダークサイドへ堕ちてしまうという皮肉。

これは、もちろん結果的にあり得ない所業ではありましたが、彼ら・彼女らだって何とか正当にやりとげたいのだが、逆立ちしても自力ではどうにもならないような「目標」と対峙してきたことがうかがえます。頼みの綱であるはずの上司も、どうしていいか答えがないので、「部下の自走」などをおそらくは大義名分にしながら、「自分で考えろ」と言い放つ。

真面目な人が「闇堕ち」する経緯

そのようにして結果的に、部下も上司も組織まるごと袋小路に追いやられた事例なのですから。これぞまさに「職場で傷つく」ことを経験していたのだと、言って差し支えないと思うのです。

「職場で傷つく」ということをなかったことにして、それも、「生産性」だの「積極性」だのという形のない「能力評価」の問題にさせられること。これが、真面目にちゃんとやる社員が、いかにして、思考停止に陥り、無能化されていくのか。「闇落ち」してしまうのか。

このような問いを埋もれさせる真因だと私は考えています。

勅使川原 真衣:組織開発コンサルタント

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