海外の優秀なエンジニアが日本企業を選ばない訳 人気が落ちている要因は「企業の体質」にあった
東洋経済オンライン / 2024年7月30日 16時0分
日本企業のIT人材採用競争力が急速に低下している。給与交渉の硬直性や柔軟性の欠如が、優秀な海外エンジニアの獲得を困難にしている。一方で、「コストを下げる」ことに固執するあまり、プロジェクトの成功という本来の目的を見失っている現状もある。
多重下請け構造がもたらす品質低下の問題も深刻化が進む「ゆでガエル」状態の日本IT業界が、国際競争を生き抜くための課題と打開策を探る。(『エンジニアリソース革命』より抜粋してお届けします)。
優秀な人材を遠ざける日本企業の体質
私が日本と海外で仕事をするなかで強く感じているのは、日本企業の採用における競争力が明らかに落ちているということです。
【グラフで見る】OECDのデータからみる「STEMコースを専攻した大学卒業生の割合」。日本は27ある先進国の中で最低レベルだった
たとえば、これまでベトナムで日本企業がベトナム人材をめぐり、欧米系企業に競り負けるということはありましたが、東南アジアの企業に負けるということはほぼありませんでした。
しかし最近は、ベトナムの現地企業にも日本企業が競り負け、採用に失敗するというケースが増えているのです。
特に、複数のオファーを受けるような優秀なエンジニアを採用する場合、この傾向が顕著です。
優秀なエンジニアの採用には、給与交渉が重要となります。けれど日本企業は、オークション状態になっているにもかかわらず、最終面接で社内のルールを重視し、現在の社員との相対的な額に基づいて「これ以上の給料は出せない」と主張する場面が多々見られます。
一般的に日本の企業では、給料は一律に決められ、部署や部門にかかわらず同じような金額の給料が与えられます。給与は実績よりも勤務年数に基づくという企業も多いでしょう。
加えて、「海外人材にはそこまでコストをかけたくない」という傾向もあり、エンジニアとの給与交渉で融通があまり利かないのです。
一方で海外企業は、必要な人材のためにはコストに糸目をつけません。
特にスタートアップは優秀な人材を採用する意欲が高く、「この人材がいなければ会社が成長できない」という理由から、コストをかけてでも積極的に優秀な人を採用しようとします。
その結果、日本企業は競り負け、海外企業に優秀な人材が集まっていくのです。
日本にある「思い込み」は過去の話
日本では「海外、特に東南アジアの人材は質が悪い」という思い込みが根強く残っているかもしれません。たしかにひと昔前はそのような部分はありましたが、現在は状況が大きく変わっています。
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