MIXI、苦闘続く「モンスト頼み」脱却への高い壁 かつての教訓生かすも、いまだ売上の7割を依存
東洋経済オンライン / 2024年7月30日 9時0分
一方、積年の課題である「モンスト一本足」からの脱却も急務だ。
モンストを中心としたスマホゲーム関連事業(デジタルエンターテインメント事業)は現在、全社売上高の7割を占める。SNSのmixiの”オワコン化”の教訓から事業多角化を目指してきたが、モンストに並ぶ柱はいまだ生まれていない。
2015年にはチケット転売サイト「チケットキャンプ」の運営会社を115億円で買収したものの、商標法違反の疑いによる警察の捜査や高額転売への批判を受けて、2018年に閉鎖した。
現在、次の柱として育てているのはスポーツ事業だ。傘下にはプロバスケチーム「千葉ジェッツ」やプロサッカークラブ「FC東京」を持つ。
ベッティング分野では、2019年に競輪車券のインターネット投票サービスのチャリ・ロト、競馬総合情報メディアを運営するネットドリーマーズを相次いで買収。2020年から運営を開始した競輪予想や投票ができるライブ動画アプリ「TIPSTAR」は、2024年3月期に通期で黒字化を達成した。
今後の成長のカギは、巨大なベッティング市場が形成されている海外での展開だ。前期には、オーストラリアで子会社の現地法人が日系企業で初めてベッティングのライセンスを取得し、サービスをリリースした。しばらくは投資が先行する見込みで、厳しい競争環境の中でシェアを獲得できるかがポイントだ。
もう1つ、収益柱へと期待を寄せるのが、子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」。2015年にサービスを開始し、利用者は2000万人以上にのぼる。そのうち約4割が、北米を中心とした海外だ。
課題は商材の拡充による収益力強化だ。「みてね」は、写真や動画のアップロードは原則無料で、写真の一括ダウンロードなどができる月額課金制のプレミアムプランや、写真プリント、GPSによる見守りサービスなどで稼ぐビジネスモデルだ。「みてね」を中心とするライフスタイル事業は、海外での広告宣伝費負担もあり、赤字が続いている。
写真プリントは海外でもニーズが高い一方、現地での印刷や配送の体制は簡単に拡大できるものではない。今後は利益率も高く海外での展開も容易なデジタル系の商品ラインナップを拡充したうえで、課金率・購入率も高めていく必要がある。
ヒットを生み出せない根因
そもそもMIXIが長らくヒットするサービスを生み出せていない背景には、イノベーションの不在がある。
SNSのmixiもモンストも、PCやガラケー、スマホなどデバイスの変化の波に乗ることで急成長を遂げた。この10年間で画期的な新たなデバイスの登場がない中で、「(成長を見込む事業に対して)人的リソースや資金の選択と集中をやりきることができていなかった」(木村社長)。
木村社長は次のイノベーションの起爆剤としてAIを挙げる。「オンデバイスAIによってハードウェアの買い替え需要が起こる機運が高まってきている。私たちにとってもターニングポイントになるのではないかと期待しており、AIを活用して(サービス)開発するよう大号令をかけている」。
MIXIの株価は2017年に記録した過去最高値(7300円)と比べると、半分以下の水準にあるものの、5月の中期方針発表後に急伸し、4年ぶりの高値をつけた。
今度こそ「一本足」の収益構造から脱却し、持続的な成長を描けるか。市場からの期待は高まっている。
田中 理瑛:東洋経済 記者
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