1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「耳が聞こえない両親」の娘が語った複雑な本音 葛藤してきた彼女が親のことを話せるようになった訳

東洋経済オンライン / 2024年7月30日 12時0分

また、「総合型選抜(旧AO入試)」や「志望理由書」など、大学受験に特有の言葉や概念は、通訳の人がいてもなかなか両親に伝わらず、面談が長引いてしまったそう。

聴者である筆者でも、子どもの受験のときは、最新の入試の仕組みや用語を理解するのには一苦労でした。日本語と異なる手話という言語でそれを伝えるのは、なかなか大変なことだろうと想像します。

梨奈さんも勉強で忙しいときなどは余裕がなくなって、「伝わらないなら、もういっか」と諦めてしまうこともあるのだそう。「反抗期がちょっと遅くて、今」なこともあり、最近は親との会話がちょっと減っているといいます。

でも、勉強を頑張っていることなどを親にわかってほしい気持ちもあり、もどかしさも募っているようです。

「私が(手話で)しゃべってることが全部伝わってるのかも、よくわからなくて。弟にしているみたいに、私に対してもわからないまま流してる部分があるんじゃないかな?って」

聴者の親子でもコミュニケーション不足はよくありますが、常に「伝わっているのかな?」という心もとなさがあるのは、コーダ特有のところなのでしょう。

ある授業をきっかけに親のことを話せるように

親がろう者であることや、人前で手話で話すことについて、梨奈さんはこれまでいろんな思いを抱いてきました。

小学生の頃、友達が家に遊びにきたときに親から「一人ひとり紹介して」と頼まれたときは、手話で名前を伝えたものの、「友達がすごく珍しそうに見てくる」のがイヤだったそう。「どうして友達の前で手話をさせるんだろう?」と感じたといいます。

中学生の頃も「知られたくない」という思いが強かったと振り返ります。

「人に言うこともなかったです。やっぱり親が障害者だからというので変な目を向けられたくなかった、というのがあって。親のことは好きなんだけれど、親が聞こえないことが、イヤだった」

そんな気持ちが変わり始めたのは、高校生になってからでした。梨奈さんが通う高校では、生徒が自分でテーマを設定して探究する授業があるのですが、そこで彼女はろう学校との交流会を企画したのです。これが、大きなステップになりました。

「そのとき同じグループのみんなに『自分の親がこうだから、こういう活動をしているんだ』ってことを言わなきゃいけなくて。そこが結構、私にとっては大きな壁だったんです。みんなの前でちゃんと正式にそれを言うっていうのは、やったことがなかった。でもそれができて、すごく大きな壁を乗り越えたなって」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください