「卒倒しそうになった」高校で学ぶ金融教育の実態 「アメリカへの投資」が日本を豊かにしないワケ
東洋経済オンライン / 2024年7月31日 10時0分
経済の教養が学べる小説『きみのお金は誰のため──ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』著者である田内学氏は元ゴールドマン・サックスのトレーダー。資本主義の最前線で16年間戦ってきた田内氏はこう語る。
「みんながどんなにがんばっても、全員がお金持ちになることはできません。でも、みんなでがんばれば、全員が幸せになれる社会を作ることはできる。大切なのは、お金を増やすことではなく、そのお金をどこに流してどんな社会を作るかなんです」
今回は、田内氏が「卒倒しそうになった」新聞記事から、日本の金融教育の問題点について解説してもらう。
「ブラックユーモア」としか思えない新聞記事
先日、高校の金融教育についての新聞記事を読んでいて卒倒しそうになった。
【写真】経済教養小説『きみのお金は誰のため』には、「勉強になった!」「ラストで泣いた」など、多くの読者の声が寄せられている。
全国屈指の進学校に証券会社の講師がやってきて、「日本の未来を明るくする方法」として、ドル投資を薦めたという内容だった。
投資による金儲けがけしからんと言いたいわけではない。僕自身も20年近くマネー資本主義のど真ん中で金融取引をしてきた。
むしろ、金融の裏側を知っているからこそ、卒倒しそうになったのだ。
学校でこんな教育をしていたら、日本の未来は明るくなるどころか、真っ暗な海の底へと沈没していく。この新聞記事はたちの悪いブラックユーモアにしか思えなかった。
2年前から高校で始まった金融教育。学校の先生たちが慣れない金融の話をするのは難しく、この記事のように証券会社などの外部講師が出張授業をおこなうケースが多い。
しかし、本来の金融教育は投資や資産形成などのお金儲けの話だけではない。金融広報中央委員会ホームページには、以下のように書かれている。
金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会の在り方について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に判断し行動できる態度を養う教育である。
つまり、個人の生活を考えながら、社会のことも考えようねということだ。社会は他人事ではなく、自分の延長にある。社会という船がまるごと沈没してしまえば、自分も溺れてしまう。
「投資でお金が増える」理由を考える
投資によって自分のお金が増えるのは、お金が自己増殖しているからではない。投資を受けた人たちが、新たな技術、商品、サービスを生み出し、将来の消費者の生活が豊かになる。その消費者から支払われたお金の一部が投資をした人へと還元される。
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