兼松、「ICTと半導体分野」で打つ2027年への布石 グループ一体運営に半導体では「落ち穂拾い」も
東洋経済オンライン / 2024年8月1日 7時0分
岩手県や北海道でも大規模な半導体製造工場の建設が進んでいる。こうした需要を取り込むほか、自ら需要を創出する戦略も描く。「サイバーセキュリティーファンド」もその1つだ。半導体の製造プロセスには機密事項が多い。ここにセキュリティー関連商材やサービスを絡ませていく。
ネックとなる人材はM&Aで確保
兼松エレクトロニクスが強みとするのは、顧客への提案力だ。
同社の梶原亮洋経営企画室長は、「製品の機能や価格だけの比較になると、どこも大差がない。一方でわれわれはデリバリーやサポート能力に自信がある。顧客の声にならない要件を引き出して提案につなげていく」と話す。
例えばサーバーストレージの保守サービスでは「24時間365日対応」が基本だが、「いつ、誰が、どの程度まで対応するのか」という要件は顧客によって異なる。「ほとんどの顧客はそこまで要件化しておらず、こちらが状況を読み解いたうえで体制を構築することが重要になる」(梶原氏)。
2024年3月期における兼松のICTソリューション事業の純利益は92億円だった。今年4月から始まった中期経営計画では、最終年となる2027年3月期に140億円程度にまで拡大させる考えだ。
期間中の成長投資600億円のうち400億円をICTソリューションに集中投下する。主な使途はM&AによるIT人材の確保だ。兼松エレクトロニクスの1000人のエンジニアだけでは、サービスのニーズ増大に対応が追いつかない。そこで事業拡大のうえでネックとなる人材の確保をM&Aで補う。
「これまで一緒に仕事をしてきた付き合いの深い会社をターゲットにM&Aを進めていく。すでにある程度目星はついている」。渡辺氏はそう明かした。
一方、ICTソリューションが独立した後の電子・デバイス部門は、どう稼いでいくのか。
電子・デバイス部門の純利益の6割以上を稼いできた事業が抜ける影響は小さくない。だが同部門の事業は、兼松コミュニケーションズの携帯電話販売のほか、液晶製造装置や半導体製造装置、電子部品検査装置、電子材料の販売など幅広い。
「電子・デバイス部門も2027年3月期にはM&Aも含め営業利益を1.5倍に引き上げる」。電子・デバイス部門長の原田雅弘常務は意気込む。利益成長を牽引するのが半導体製造装置関連のビジネスとなる。
半導体業界では、AI向けなどの先端分野に注目が集まっている。アプライドマテリアルズや東京エレクトロンなど、製造装置の大手メーカーも最先端装置の据え付けやメンテナンス対応に追われている。
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