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子育て卒業世代が地方の保育園に"留学"する理由 就労と移住体験がセット 得られた「気づき」

東洋経済オンライン / 2024年8月1日 7時0分

この経験から、藤原さんは「元気だからいい、声が出ないからダメなどと、今まで知らず知らずのうちに自分や家族を評価して、ダメ出ししていたことに気づいた」という。

「今後は、自分や周りの人のありのままを受け入れようと思えた。この気づきは、はじめての土地で2週間、一人暮らししたからこそ得られたもの。観光だと気持ちが外に向いてしまうから、ここまでじっくり自分の内面を見つめ直せなかったと思う」(藤原さん)

「観光では気づけないよさ」を体感

留学を経て、「まだまだ知らないことがたくさんある」と感じた藤原さんは、「今後もいろいろなことに挑戦しながら、キャリアの幅を広げたい」と話す。

一方、「突然やってきた人に何ができるのか懸念はあったが、子どもたちが多様な大人と触れあうよい機会になると考えた」と話すのは、藤原さんの受け入れ先である美濃保育園の雲山晃成園長だ。

美濃保育園では保育の質を高めるべく、普段から保育士が活発に意見交換したり、外部の教育研究者の意見も積極的に取り入れたりしている。

そのため今回、おとなの保育園留学で、豊かな人生経験を積んだプレシニアを受け入れることについても「保育士にとって、新たな知見を得る機会になるはず」(雲山園長)と考えた。

実際には「2週間程度では園の良さを知ってもらうだけで精一杯」だったが、「それでも、いろいろなバックグラウンドがあるほうが加わった方が、保育の幅が広がって面白い。今後もさまざまな方に来ていただければ」と話した。

藤原さんが滞在したゲストハウスを運営している、みのシェアリングの橋元麻美WASITA MINOコミュニティマネージャーは、「おとなの保育園留学でやってきた人を見かけると、美濃の人たちもうれしそうだ」と話す。

重要伝統的建造物群保存地区に指定されている「うだつの上がる町並み」や美しい川、そして飲食店やスーパー、勤務地となる保育園のすべてが、留学生が宿泊するゲストハウスから徒歩圏内にある。

また、以前から保育園留学の取り組みがまち全体で認知されているため、地元の人から「留学で来たの?」などと声かけをしてくれる環境がある。

「美濃はコンパクトなまちで、人と人の距離も近くてあたたかい。観光などの短期滞在よりも、中長期滞在の方が美濃の良さを感じてもらえると思うので、まちを好きになっていただくのによい取り組みだと考えている」(橋元さん)

まちへの波及効果にも期待

今後、「おとなの保育園留学」の受け入れ開始を予定している北海道の上士幌町は、東京23区ほどの面積に、人口5000人あまりが住むまちだ。

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