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日本が「金利ある世界」に戻り、損する人と得する人 預金と住宅ローン以外にも大きな影響が及ぶ

東洋経済オンライン / 2024年8月2日 8時0分

一方、金融業にとって、金利上昇で利ザヤが改善することは増益要因になります。また、輸入が多い業種、たとえば小売り・エネルギーなども、円高が進めば購買力が増すので、金利上昇は増益要因となり、賃金が上昇しやすくなります。

もちろん以上は一般論で、個々の企業ごとに影響は大きく異なります。是非この機会に勤務先の負債比率(=負債÷純資産)を確認しておくことをお勧めします。いずれにせよ、大半の国民に金利上昇は大きな影響があるのです。

このように、人によってプラスの影響とマイナスの影響がある中、日本経済全体への影響はどう見ればいいのでしょうか。

日銀の植田総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、政策金利の引き上げによる景気への影響について、「一部の(住宅ローンなどの)貸出金利が上昇する影響で、その部分だけをみればマイナスに影響する可能性はある。(しかし)大きなマイナス影響を与えるものではない」との見解を示しました。

日銀は2%の物価上昇目標を掲げており、生鮮食品を除く消費者物価上昇率は2年以上にわたって前年比2%を超えています。今春の賃上げや定額減税の効果により、利上げをしても個人消費は大きく崩れないと判断したものとみられます。

一方、賃上げや定額減税の効果に持続性はなく、個人消費の低迷が長期化するという懸念があります。1人当たりの実質賃金は26カ月連続のマイナスとなっていることから、金融政策決定会合では利上げに慎重な政策委員もいたようです。

つまり、今回の利上げを吸収して景気拡大が続くのか、景気が腰折れしてしまうのかは、政府・日銀の今後の舵取りによって決まってくるでしょう。

金利安・円安で日本が衰退する

ところで、個人的に残念に思うのは、政府・日銀や市場関係者の議論が、短期的な景気への影響に偏っていることです。それよりも大切なのは、長期的にどういう社会を作っていくかでしょう。

日本以外の国が2020年のコロナ禍から立ち直り、金融緩和政策から出口戦略を進めた一方、日本は現在に至るまで異次元の金融緩和を続けた結果、円安が進み、今年7月上旬には一時1ドル160円を突破しました。

円安の最大の問題点は、人材の枯渇です。円安で日本から海外への人材流出が増え、海外から日本への人材流入が減り、国内が空洞化してしまいます。

たとえば介護の世界では、日本人の介護士が高賃金を求めてオーストラリアなどに出稼ぎするようになっています。一方、以前は日本に来てくれたインドネシア人など海外の介護士は、低賃金の日本を避けるようになっています。

選ばれなくなった日本

韓国は、世界史上まれに見る少子化で国家消滅の危機にあるとされますが、2023年の総人口は5177万人で、前年より0.2%増えました。韓国人は少子化の影響で前年より0.2%減った一方、韓国に居住する外国人は前年より10.4%も増えたためです。

韓国では、少子化による人手不足が深刻で、外国人労働者なしには生産活動が成り立たない状態です。韓国は、政府管理のもとで非熟練の外国人労働者を受け入れる「雇用許可制」を導入し、外国人労働者を誘致しています。

韓国だけではありません。いま先進国の多くが人口減少による人手不足を解消するために、移民受け入れに取り組んでいます。日本は、円安による低賃金と言葉の壁で、移民から敬遠されるようになっています。

今回の利上げを、自分の生活を見直し、国家のあり方を考えるきっかけにしたいものです。

日沖 健:経営コンサルタント

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