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「含み益が吹き飛んだ」日銀利上げ砲0.25%の衝撃 わずかな利上げで「1ドル150円割り込み」のなぜ

東洋経済オンライン / 2024年8月2日 9時0分

最近になって日本は大幅な貿易赤字に転落しているという。かつて、その品質の高さから飛ぶように売れていた日本製品だが、外国も技術的に追いつき、輸出を増やすのは簡単ではないらしい。加えて、高齢者人口が増える中、医療や介護の分野で働く人手を確保する課題も抱えている。

「輸出が増えないからといって、輸入をおさえるのも難しいですよね」

と七海もしぶい顔をする。食料やエネルギーの自給率の低い日本は、小麦などの食料品や、発電に必要なエネルギー資源を海外に頼っているそうだ。

「七海さんの言うとおりや。食べ物や電気は生活必需品やから、輸入をがまんするわけにもいかへん。これが高級ブランドのバッグなら、がまんすればすむ話やけどな」

しかし、貿易赤字が増えると本当に困るのだろうか。優斗の頭に疑問が浮かんだ。

「貿易赤字って、外国にお金が流れるのが悪いんでしょ。だったら、お金を印刷しちゃえばいいんじゃないですか」

「おもろいアイディアやな。せやけど、問題は国内にある日本円が足りなくなることやない。外国が日本円を大量に持つことや」

日本円を使うことで、外国の人たちは、日本製品を買ったり日本を旅行したり、さまざまな形で日本の人に働いてもらえる。もし、外国の人たちが大量に日本円を保有するようになって、それを使い始めたら、日本にいる僕たちは、自分たちの生活だけでなく、外国のためにもたくさん働かなければいけなくなる。

それこそが将来のツケになるとボスは言う。

「でも、それって、ふせげませんか」

優斗は、その話を自分の国に置き換えて考えてみた。

「僕の国で発行したサクマドルを外国の人たちがたくさん持っているのと同じなんでしょ。サクマドルを使わせなくしたらいいじゃないですか」

その反論に、ボスは首を振った。

「そうは問屋がおろさへんで。日本円が使い物にならへんと、外国の人たちは日本円を欲しがらなくなる。日本円の価値が下がって、誰も食料や石油を売ってくれへんやろな。そうならんためにも、貿易赤字は無視でけへん」

『きみのお金は誰のため』191ページより

食料、エネルギー、資源など生活に必要な商品を外国に頼っている日本は、国際市場を無視できない。外国のために何ができるか(外国にどんな製品を売れるのか)を真剣に考える必要がある。それが難しいのならば、自給率を高めることを考えないといけないだろう。

さきほど、外貨投資で円安に備えられると書いた。新NISAは岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の一環だが、それだけでは資金に余裕がある人しか救われない。

また、新NISAによって上半期だけで6兆円以上の資金が外貨投資に回っているわけだが、それ自体が円安を進めている一面もある。

結果だけ見ると、個人の外貨購入によって押し上げられたドルを、政府日銀が高値で売って(5兆~6兆円規模のドル売り介入)儲けたように見える。もちろん、政府が意図的に行っているとは思わないが、やっていることがチグハグに感じられる。

利上げによる円安回避はただの時間稼ぎにしかならないだろう。利上げを続けて景気が冷えこむ前に、何らかの方策を打たねばならない。

くれぐれも、総選挙までの時間稼ぎという意味ではない。

田内 学:お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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