製紙大手2社の姿勢試すエクアドルでの労働問題 取引先企業で浮上の「強制労働疑惑」にどう対処
東洋経済オンライン / 2024年8月5日 8時30分
「私たちは家畜のように扱われた」 エクアドル人106人が現代奴隷制度で日本企業を提訴――。
スペイン語圏の大手新聞『エル・パイス』は今年2月、このような見出しの記事を掲載した。日本企業とは1963年設立の古川拓殖エクアドル(FPC)だ。中南米のエクアドルでアバカを栽培する農園を経営する。アバカはバナナに似た品種でマニラ麻とも呼ばれ特殊紙などに使われる。
記事は、農園経営者らの刑事責任を問うための手続きが進行中という内容だった。これとは別に、農園で働く労働者らがFPCに強制労働をさせられたとして憲法違反を問う裁判も進められている。こちらは2021年に一審と控訴審で労働者に有利な判決が下された。現在は最終審の判断を待つ。
一連の訴訟は、エクアドルの人権機関による2019年の告発をきっかけに始まった。人権機関は、FPCの農園で働く労働者の置かれた境遇について以下のように指摘した。
国連の人権理事会の専門家も懸念
「農園内のキャンプで一家が生活しているが、建物は狭く古いうえ、きれいな飲み水を確保することすら難しい。アバカの伐採や繊維を機械で抽出する際の安全対策が不十分で、手や腕を切断する事故が発生している。アバカを加工場に輸送する過程で児童労働も行われ、農園内には無戸籍の人もいる」
国連の人権理事会の専門家も強い懸念を持っている。今年4月、人権理事会の小保方智也特別報告者(イギリスのヨーク大学教授)などがまとめた声明文では、FPCが60年以上にわたり強制労働などの深刻な人権侵害を行っていると指摘。速やかに実効性のある賠償が行われるべきだと訴えた。
FPCはエクアドルに拠点を構えているが、親会社のマヴェンズは東京都中央区にある。アバカの輸出入業などを手がけており、直近でわかる2019年9月期の売上高は7億8000万円。従業員は数人の中小企業だ。
そのマヴェンズの日本人経営者から記者にメールが届いた。「偏った情報を基に取材を進められるとビジネスに影響が出るので説明をしたい」との申し出だった。
マヴェンズのオフィスを訪れると、待っていたのは日本人経営者だけではなかった。FPCのマネジャーや弁護士など4人のエクアドル人も同席した。
訴訟に対するマヴェンズとFPCのスタンスはこうだ。「裁判はまだ最終審での判決が下されておらず確定していない」「農園を巡っては複数の裁判が行われており、多くの裁判で勝訴している」。
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