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効果ある?「片側空け」防ぐエスカレーターの性能 どんな仕組みなのか、日立が明かす開発秘話

東洋経済オンライン / 2024年8月5日 7時30分

続いて新機能。エスカレーターの乗り込み口付近の水平状態の踏み面に、2列での立ち位置をLEDが照射し、2列立ちを誘導する。続いて、上りエスカレーターに乗り込んで水平状態から階段状になっていく位置で、ステップの蹴上げ部分にLEDを照射する。段差を強調することで、歩かずに立ち止まることを促す狙いがある。

さらに、エスカレーターの両脇のスカートガードにもLED照明を設置し、ステップの移動スピードに合わせて照明を光らせるようにすることで、歩かずに立ち止まって利用することを促すという。

今回の5つの機能はいずれもLEDを用いたものだ。日立が提示した複数案の中から大阪メトロが採択した。LEDの代わりにエスカレーターへのラッピングで2列立ちを促す案も出たが、万博の最寄り駅ということを考えると未来感があるLEDのほうがいいということになった。そういえば、夢洲駅に乗り入れる新型車両400系も宇宙船のようなデザインである。

新機能の効果はどれくらい?

LEDを活用した5つの機能でどのくらいの片側空け抑止効果が見込まれるのか。試作機を開発している時点ではまだコロナ禍のさなかということもあり、大勢の人に試してもらうような大がかりな実証実験はできなかった。

そのため、限られたメンバーで有効性を確認したところ「乗り込み位置がわかりやすい」といった声が多くを占めたという。2列で乗る人が後に続けば、歩く人はいなくなるはずだ。

片側空け抑止機能は既存のエスカレーターに追加で設置することが可能だ。大阪メトロは他駅のエスカレーターに設置することについて「公表した内容がすべて」であり、そうした計画はないという。しかし、もし有効性が確認されれば、大阪メトロだけではなくほかの鉄道事業者の駅のエスカレーターにも広がるかもしれない。

世界の昇降機メーカーはアメリカのオーティス、フィンランドのコネ、スイスのシンドラー、ドイツのTKエレベーターが大手4社とされており、日立はそれに続く世界5番手という位置付けである。

いっぽうで、各国のエスカレーターの片側空けの状況を見ると、ロンドン、パリなど欧州主要都市でも駅のエスカレーターを見ると立っているのは一方だけで、片側は歩いて上る人のために空けてある例が少なくない。

歩行の「危険性」知る機会を

東京・足立区にある「日立ビルソリューション-ラボ」にはエスカレーターやエレベーターの実機があり、日常では経験できないような災害時の機能を体験することができる。

試しに下りエスカレーターに乗った状態での緊急停止を体験した。立ち止まった状態で、手すりも握っていたが、それでも突然エスカレーターが止まったときのガクンという衝撃は、バランスを崩して前につんのめるほど大きかった。手すりを握らずに歩いていたら停止の衝撃で転げ落ちていたかもしれない。

それだけではない。単独の転倒ならまだよいが、周りにも利用者がいたら将棋倒しのような大事故にもなりかねない。エスカレーターで歩くことは、万一の際には他人にも危害を加えるリスクがあるということは頭に入れて置く必要があるだろう。

歩かないでくださいというかけ声だけでは限界がある。エスカレーター上の歩行がどのくらい危険かということを体感してもらうような試みも鉄道事業者には必要なのではないだろうか。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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