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「日本経済最悪のシナリオ」を意識し始めた日本株 円安の追い風を自ら止め、政策は機能不全に

東洋経済オンライン / 2024年8月5日 21時10分

1990年代半ばからの日本で起きたデフレの長期化は、通貨価値の行きすぎた上昇(大幅な円高)を伴っていた。

経済主体のデフレ期待が支配的になれば、安全資産である円キャッシュへの需要が増えるので、為替市場においては恒常的に円高圧力が強まる。そして、デフレ期待の強まりで起きた円高が、輸出企業の価格競争力を削ぎ円ベースの海外売り上げを削減、そして経済成長を低下させる経路で一般物価に対して下落圧力が強まる。

つまり、行きすぎた円高を自ら放置することは、デフレを許容する緊縮政策であり、実際に1995年、2008~2009年の日本では、相当緊縮的な経済政策が実現したと筆者は位置付けている。つまり、デフレと通貨高の悪循環に自ら陥り、デフレと低成長を長期化させたということであり、こうした惨状が繰り返されたのが、2012年までの日本経済である。

第2次安倍政権下でアベノミクスが始動した2013年以降は、超円高が修正されデフレが和らいだ。緩やかなインフレと通貨安の好循環が2022年以降さらに強まり、2024年度の春闘ではようやく賃金上昇率が3%を上回るなど実質賃金上昇を伴う好循環が強まりつつある。

昨年4月に植田和男氏が日本銀行の総裁となってからは、ゆっくりと引き締め政策を進める中で、円安が進みインフレ期待を底上げして年率2%のインフレ完遂に近づきつつある。2022年以降の大幅円安はアメリカの金利上昇がもたらした側面が大きいが、日銀の金融緩和の長期化が円安を後押しし、これらの結果、日本でも年率2%のインフレが恒常化しつつある。

だが、生活必需品を中心とした大幅な価格上昇は、実質所得の目減りをもたらし、2023年半ばから家計の消費を抑制している。家計に対する所得分配政策である減税政策などが不十分であることが家計の所得目減りを招き、先述したように2023年半ばから日本経済の成長はほぼ止まっている。

マクロ安定化政策が機能不全に陥りつつある

大幅な円安がメディアなどで消費低迷の戦犯になっているが、深刻な問題はインフレ安定と経済成長を後押しするマクロ安定化政策が、機能不全に陥りつつあることだ。

筆者の懸念が杞憂で済めばいい。だが、日銀が断続的な利上げを始める中で、仮に円高進行を促す引き締め政策を後押しする新たな政権が、2024年10月以降誕生すればどうなるか。その場合、日本株のリターンは、米国株を大きく下回り続けるだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己:エコノミスト

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