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イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏

東洋経済オンライン / 2024年8月6日 14時0分

OpenAIのサム・アルトマンとテスラのイーロン・マスクはかつては同じ志を持っていた(Photo by Muhammed Selim Korkutata/Anadolu via Getty Images)

ChatGPTを開発したOpenAIは2015年にイーロン・マスクとサム・アルトマンをはじめ6名の起業家、技術者らによって設立された。OpenAIと命名したのはマスクである。

ところが2018年、マスクは突然OpenAIを去っている。一体、何があったのか。

マスク、アルトマン、そしてグーグルを巻き込んだシリコンバレーの覇権争いの内幕に迫る。(小林雅一『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』から一部を抜粋して再構成しています)

イーロン・マスクに憧れていたサム・アルトマン

2015年、アルトマンは30歳を目前にして何か新しいことに挑戦したくなった。

カリフォルニア州の知事選に立候補することも頭をよぎったが、自身のキャリアを振り返ると、むしろ子供の頃からの夢である「人間のように考えるマシン」、この分野の専門用語で「AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)」を今こそ自分の手で実現すべきだ、という結論に至った。

AGIとは要するに、人類と同等か、あるいはそれを凌ぐほどの汎用的な知能を備えたスーパーAIだ。

そのための新たなプロジェクトを立ち上げるに際し、アルトマンはまず最初にイーロン・マスクを誘うことにした。

アルトマンがマスクと最初に会ったのは、その数年前のことだ。そのとき彼はマスクの案内で宇宙開発企業スペースXの工場を見学しながら3時間ほど話し込んだ。

当時のアルトマンは人生で初めて起業したループトを売却して間もない駆け出しの起業家だったが、彼より一回り以上年上のマスクは既にテスラとスペースXのビジネスを軌道に乗せた規格外の経営者だった。人類を火星に移住させる夢を滔々と語るマスクはアルトマンにとって憧れの的だった。

このマスクにアルトマンはメールを出し、その中で「AGIを実現するためのマンハッタン計画を始めようとしているけど興味ある?」と尋ねた。マスクは「イエス」と答えた。

マスクとアルトマンは「人類に貢献する安全なAGI」を実現するため、何らかのプロジェクトを立ち上げることで合意に達した。

AI開発で先頭を走っていたグーグル

2014年に英国の気鋭スタートアップ「ディープマインド」を買収するなど、当時AI開発で先頭を走っていたのはグーグルだった。

ディープマインドは優れたAI研究者で神経科学者、またチェスの名手でもあるデミス・ハサビスらによって、2010年にロンドンに共同設立された。2014年、グーグルに推定4億ポンド(約700億円)で買収された後も組織としての独立性は維持され、事実上はハサビスらの指揮の下で「ビデオゲームで遊ぶAI」などの研究開発に取り組んできた。

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