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日産「99%減益」の真因、アメリカ事業に2つの課題 インセンティブ濫発とHV不在のダブルパンチ

東洋経済オンライン / 2024年8月7日 8時0分

2023年度の役員報酬は内田誠社長が6億5700万円、スティーブン・マーCFOが6億7600万円。第1四半期の営業利益は2人の昨年度の報酬合計より少ない(写真:日産自動車)

「昔の悪い日産に戻ってしまった。経営が本質的な問題解決に取り組まないから、何度も同じ過ちを繰り返す」。日産自動車の元幹部はそう肩を落とす。

【グラフ】超円安の追い風があった2024年4~6月期に日産の営業利益は99%減となった

日産自動車が7月25日に発表した2025年3月期第1四半期(4〜6月)決算の営業利益はわずか10億円。前年同期の1285億円から99%の減益となった。円安という強い追い風があったにもかかわらず、だ。今年5月に掲げたばかりの通期6000億円の営業利益計画も5000億円に下方修正した。

新たな業績予想では、為替前提を従来の1ドル145円から155円へと円安方向に見直した。が、その後、日銀が利上げに動いたことで為替は1ドル145円前後まで上昇している。円安修正の動きが続けば、再度の下方修正に追い込まれる可能性がある。

北米事業の採算が急悪化

業績悪化の最大の原因は、近年稼ぎ頭だった北米事業の採算が急悪化したことにある。現地での在庫が膨らんだことで販売奨励金(インセンティブ)などの販売コストが急増し、収益を圧迫。北米事業の第1四半期のセグメント営業利益は前期の1320億円から209億円の赤字に転落した。

日産のスティーブン・マーCFOは「ローグの2024年モデルの切り替えが遅れた」と販売コスト増の背景を説明する。ローグは日産のアメリカ市場における主力SUV(スポーツ用多目的車)で、日本市場の「エクストレイル」に相当する。

競合の他メーカーが2024年モデルの販売を始めてからも、在庫がたまっていた2023年モデルのローグを売り続けたことで販売コストが膨らんだ。今年1~3月(前第4四半期)に9万台あったローグの販売台数は、4~6月(今第1四半期)は5万台と苦戦している。

調査会社によれば、6月の日産の1台当たりインセンティブ額は約4000ドル(約60万円)と1年前の2倍近い水準まで上昇している。これはトヨタ自動車の2.5倍、ホンダの1.6倍に相当する。

決算発表の場でインセンティブ上昇について問われた内田誠社長は「われわれのインセンティブは業界平均レベルだと思っている。販売の質の向上を維持するという観点から、ほとんどはキャッシュ(値引き)ではなくお客様のローンの支援に当てている」と答え、特段問題視しなかった。

だが、日産がアメリカ市場で「インセンティブ漬け」になったのはこれが初めてではない。カルロス・ゴーン時代の拡大戦略の中にあった2016年にも1台当たりインセンティブ額が4000ドルを超えた。これを原資に現地ディーラーは安売りを濫発、日産車のブランドは大きく毀損した。

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