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「虎に翼」のモデル"三淵嘉子"人生支えた父の一言 知人は進路を話すとドン引き、家族の反応は?

東洋経済オンライン / 2024年8月7日 11時0分

法律を学ぶことを決めたのは、東京女子高等師範学校附属高等女学校(現:お茶の水女子大附属高校)を卒業してからのことだ。女性も法律を学べるという、明治大学専門部女子部法科に進学しようと、嘉子は卒業証明書をもらうために母校を訪ねた。

ところが、「法律を学ぶために明大の受験を考えている」と言うと、受け持ちの先生からは思いとどまるように何度も説得されたという。なんとか納得してもらい、卒業証明書をようやくもらえたかと思えば、今度は故郷に戻っていた母が帰京して大騒ぎに。

「法律などを勉強しても、将来あてになるわけでもないし、嫁の貰い手がなくなるだけ」と泣きながら、反対されてしまった。

ただ女性が法律を学ぼうとしただけで、周囲が激しく動揺する……。嘉子が生きたのは、そんな時代だったのである。

友人には「こわいなあ」とドン引きされる

女性が法律なんて学んでいったい、どうするというのか――。

明治大学に入学してからも、知人に会って事情を話せば、奇異な目で見られたようだ。嘉子は「私の歩んだ裁判官の道」で、当時のことを次のように振り返っている。

「知人に出会ったとき今どうしているのかを聞かれ明大で法律を勉強していると答えると、とたんに皆一様に驚きあきれ、何という変わり者かという表情で『こわいなあ』と言われるのにはこちらが参ってしまった」

そんな経験をして以来、嘉子は「他人には法律を勉強していることは言うまい」と心に決めたのだという。

NHKの連続テレビ小説『虎に翼』と同じく、大河ドラマ『光る君へ』も話題になっているが、主人公である紫式部もまた、宮仕えをした際には、漢学の知識が豊富であることを、周囲に悟られないように苦心したという(毎週日曜日更新の紫式部の連載:『紫式部と藤原道長が生きた平安時代』)。

「漢字の一すらも書かないようにした」と日記で振り返っている。嘉子にも式部のそんな気持ちがよくわかったのではないだろうか。

その一方で、そんな現状にどうしても納得できない、という思いも嘉子はつづっている。

「自分でも少し人と変わった途を選んだと思ってはいたが、何か日陰の道を歩いているような口惜しさを覚えずにはいられなかった」

「何か専門の仕事をもつための勉強をしなさい」

そんな嘉子の心を支えたのが、父の言葉だった。エリートだった貞雄は、男女は平等であるべきだという考えを持ち、娘の嘉子にこんな言葉をかけていた。

「ただ普通のお嫁さんになる女にはなるな、男と同じように政治でも、経済でも理解できるようになれ。それには何か専門の仕事をもつための勉強をしなさい」

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