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イスラエルvs.イラン「中東全面戦争」の現実味 「暗黙のルール」維持も徐々に高まる緊張

東洋経済オンライン / 2024年8月7日 15時0分

経済的に困窮するレバノンもイエメンと似たような状況だ。本質的にはハマスとイスラエルの問題である対立に本格参戦し、レバノンを戦場に変えてしまうことを多くの国民は望んでおらず、政治組織として国政でも活動するヒズボラもそうした事情を理解している。

2006年にイスラエルとヒズボラが本格的に交戦したレバノン戦争では国土が激しく荒廃したことも生々しい記憶として残っていることも大きい。

紛争拡大望まないイランの事情

イランにもイスラエルとの全面的な戦争を望まない事情がある。大統領就任式に出席するためイランを訪問していたハマスの最高幹部を暗殺されてメンツを潰されたが、根幹にはイスラエルとハマスの対立があり、イランとしても本格的に紛争を拡大させるのには及び腰だろう。

保守的なイランの宗教体制は国民を弾圧・抑圧することで成り立っており、国民生活に打撃となるイスラエルの軍事行動を招く報復を国民は望んでいない。

イスラエルは情報戦で優位に立ち、イランの内部に情報網を構築してスパイを送り込んでいることがハニヤ氏暗殺からも明らかだ。「イランには反体制派や現体制に批判的な国民も多く、イスラエルに協力しようとするイラン人を確保するのは容易だ」と専門家は指摘する。

イスラエルと戦火を交えることになれば、国民生活や経済への影響も広がり、何らかのきっかけで反体制デモにつながるなど体制動揺の引き金となりかねない。ハマスの最高幹部が暗殺されたことに報復しなければ、支援する中東各地の民兵勢力に示しがつかないが、イスラエルとの本格的な戦争に発展させる理由や動機に乏しいというのも実態だ。

イラン外務省報道官は5日、「イランは中東地域の安定を希求しているが、これは侵略者を罰し、シオニスト体制(イスラエル)の冒険主義への抑止力を構築することで実現する」と指摘し、紛争を拡大させる意図はないとのメッセージを発している。

最悪のシナリオは

徐々にイスラエルとイランやヒズボラなど中東の反イスラエル陣営との緊張は高まっている。イスラエルのメディアは、ヒズボラが最初に報復攻撃を開始し、イランが情勢推移を見ながら自らの報復内容やタイミングを判断するとイスラエル当局は見ていると伝えている。ヒズボラの報復は軍事的な標的を中心的に狙うが、民間人も危険にさらす可能性があると分析しているという。

ヒズボラの報復攻撃で民間人の大きな犠牲が出た場合、イスラエルは首都ベイルートや空港などを空爆、ヒズボラは戦闘員をイスラエル北部に越境させ、イスラエル軍がレバノン南部に地上部隊を侵攻させる本格的な戦争に発展する恐れがある。

その場合、フーシ派のほか、シリアやイラクの親イラン勢力も介入し、イスラエルと反イスラエル陣営の全面的な戦争になる事態も考えられる。

そうなれば、ガザ地区で見られるような惨劇がレバノンなどでも繰り返されることになり、イスラエル側でも民間人を含めた被害が拡大する可能性がある。イランやヒズボラの報復内容次第では、中東は全面戦争の瀬戸際に立つことになりそうだ。

池滝 和秀:ジャーナリスト、中東料理研究家

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