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「佐渡島の金山」が変えた日本外交の「安倍基準」 世界遺産登録めぐり日韓の外交が機能した

東洋経済オンライン / 2024年8月8日 9時0分

また、その展示の一部を紹介するとして、「朝鮮半島出身の労働者は、削岩、支柱、運搬といった危険な坑内作業に従事する者の割合が高かったことを示すデータもある。さらに、労働条件をめぐって行われた労働争議に関する記録 、食糧不足に関する記録、 死亡事故に関する記録も残されている。朝鮮半島出身者について、ある1カ月の平均稼働日数は28日であったことを示す記録があるほか、朝鮮半島出身労働者の中には逃走したり収監されたりした者がいたことを示す記録もある」と加えた。

「日本政府の対韓政策は変化した」

安倍氏は戦後70年を機に出した、いわゆる「安倍談話」で、「子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と訴えた。安倍氏の死去後も、韓国に対する歴史問題では、安倍氏が語った表現や認識が交渉の際の基準となってきた。

だが今回の日本代表の表明は、「安倍基準」を超える踏み込んだ内容となっている。今回、韓国との交渉にかかわった日本政府関係者の1人は「日本政府の対韓政策は明確に変化したと言える」とふり返る。

韓国では国内の厳しい政治対立もあって、野党勢力が「日本の歴史歪曲を容認した」などと尹政権に強い批判を加えている。ただ、国を挙げての反対運動が起きるような状況ではない。

「佐渡」の登録決定後の韓国の状況として、東京新聞が特筆すべき記事を出した。

同紙は、韓国・アジア平和と歴史研究所の韓恵仁・研究委員が「私たちが労働の強制性が読み取れると考える資料が含まれている」と評価していることを報じた。韓氏は、史料をもとに精緻な分析を進めることで定評があり、韓国国内の急進的な主張を掲げる団体のメンバーからも支持を得ている存在だ。

韓国の識者も評価

ただ韓氏の指摘のように、理論的側面から批判する声が高まらないとしても、政治面はまた別の話だ。2024年4月の総選挙で与党「国民の力」が歴史的惨敗を喫し、尹政権は常に低支持率にあえぐ。政府・与党を攻める材料として、「佐渡」が今後も使われる可能性は排除できない。

それは日本も同様で、「安倍基準」の後退が今後、どういう形で取り上げられるかわからない。

「佐渡」の登録には外交が機能したが、双方の政局は不安定で日韓関係全般の先行きはなお霧の中だ。

箱田 哲也:朝日新聞記者

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