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「世界恐慌で事態悪化」日本が戦争に突入したワケ 無謀な戦争へと突き進んでしまった理由とは

東洋経済オンライン / 2024年8月8日 18時0分

金本位制のしくみを理解したところで、日本が戦争するきっかけとなった経済的背景を説明していきます。

1917年に日本は第一次世界大戦のために金輸出を禁じ、金本位制は機能停止していました。しかし、その後の1930年1月、日本は大蔵大臣の井上準之助が金本位制を復活させます。金本位制を復活させた目的は、国際競争力をつけるためです。

通貨と金との交換比率を保証することで、外国通貨と円の交換レートが固定されました。これは、ドルの価値尺度も金で、円の価値尺度も金だから、ドルと円の交換レートも一定になるということです。当時の多くの国が採用していた固定相場制度に戻るので、貿易がしやすくなるメリットがありました。金輸出解禁を実施することで、外国為替相場を安定させ、輸出の増大を図ることができるためです。

また、当時の日本では第一次世界大戦を経て、政府の補助金で生き残っていた企業が多数存在していました。この状況では、日本の経済が本当に強いとは言えません。多額の借金を抱えていたり、赤字が続いていたりして倒産しそうな企業を整理したいという思惑もあり、国際競争のなかに日本企業をさらしました。痛みを伴ってでも、日本経済を強くしたいと考えて金本位制を復活させたのです。

ところが、です。金本位制を導入した後に日本は不況に陥りました。原因は、金本位制の導入方法です。

先述の通り、金本位制では、円の価値と金の価値を結びつけます。このときの基準を「平価」(=交換レート)と呼びます。

このとき「平価」の選択肢は2つありました。ひとつは、旧平価で100円=49.85ドルという金輸出解禁前の相場基準です。もうひとつは新平価で、100円=46.5ドルという当時の実勢を反映した基準です。

あえて不況を受け入れるつもりでいた理由

時の大蔵大臣・井上準之助は、当時の経済実態に合った新平価でなく、経済実態に合わない旧平価で金本位制を導入しました。円の国際的信用を落としたくないという配慮から旧平価(金輸出解禁前の相場)で解禁したわけですが、これが実質的に円高を招き、輸出に不利な状況を生み出してしまいました。

旧平価だと円の価値が過小評価されているから、円に人気が集まってしまったのです。円高のときはドルの価値が円に対して低くなるので、ドルで支払いを受ける輸出は不利になり、逆にドルで払う輸入は有利です。輸入に有利なので、輸入代金としてドルでの支払いが増加し、貨幣と同じ価値をもつ金が国外に流出することにつながりました。問題はここです。

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