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新人の心を病ませた法人営業「カスハラ」の理不尽 取引先の「カスハラ問題」どう乗り越えるか

東洋経済オンライン / 2024年8月8日 8時0分

「顧客の俺たちが土曜日も仕事してるんだから、あんたも土曜日に休むだなんてどうかしてる」

こう言われ、土曜日出勤を強要された物流会社の営業がいた。「土曜日に注文することもあるのだから、土曜日も働け」という理屈である。そんな理由で休日出勤させられたら、たまったものではない。

ある給食事業会社では、こんな話があった。

「使い勝手をよくした発注システムを開発した。なので今後の発注はすべてシステム経由で」と取引先に通達したが、一社だけ従わない取引先があった。

再三頼んでも、一向にファクスでの発注をやめず、あげくの果てに以前よりも「読みづらい文字」で書きなぐって送ってくるようになった。明らかな嫌がらせであった。

上から目線で、社内ではらすことのできない鬱憤を外部の営業に向ける取引先社員もいる。ある印刷会社では「(発注元の担当者が)イライラしているときは、わざと時間外に発注をかけてくる」。そんなケースがあると言っていた。

「注文は夜の7時まででお願いします。時間外労働の上限規制の関係で、それ以降の対応はいたしかねます」と伝えても、夜の8時以降に注文を入れ「今日中に在庫確認しないと、おたくとの取引は金輪際やめさせてもらう」と脅してきたという。

このような行為は、ハラスメント以外の何物でもない。

法人営業に対するカスハラ対策

では、法人営業に対するカスハラにはどのような対策があるのか?

一般的なカスハラ対策としては、従業員を守るための対応マニュアルの整備、相談窓口の設置などがある。もちろん法人営業を守るうえでも、同様の対策は必要だ。

しかし相手は一個人ではない。法人である。取引額が大きい場合、「私さえ我慢すれば……」と営業個人が泣き寝入りするケースはとても多い。

そこで20年以上、営業コンサルティングをしてきた立場から抜本的な対策を紹介しよう。

それは「モンスター化するお客様との取引を断る」だ。店舗や公共施設、公共交通機関では特定のお客様を断ることは難しい。しかし法人相手なら可能だ。

「そういうわけにはいかない」と反論する人もいるだろう。過去に10年、20年と取引していると、そう簡単に取引をやめるとは言えないのはわかる。創業時代にお世話になった重要な取引先だったら、なおさらのことだ。

しかし今は「超採用難の時代」だ。自社の社員よりもお客様を優先するような企業姿勢だと、優秀な人材を採用したり、雇用維持することは難しくなる。

それに、ある取引先に依存した経営は、社員の仕事に対する満足度、やりがいを著しく落とすことにもつながる。営業力を鍛え、新規開拓を繰り返して「予材(まだ取引に至っていない重要な顧客や案件)」を増やせばリスク分散につながるのである。

「苦しくてもお客様の言うことだから我慢しろ」が通じるのは、昭和時代の営業だけだ。営業に精神的な負荷を与えてまで、取引先を大事にすることはない。

私は現場でこのような問題にずっと直面してきた。

「カスハラ」が大きく取りざたされる現代だからこそ、勇気をもって特定のお客様に依存した経営体質を変えていってほしい。新しいマーケットを開拓しようとすることで、新しい事業アイデアも生まれるのだから、経営革新にも役立つはずだ。

横山 信弘:経営コラムニスト

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