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日本も他人事ではないアメリカ「景気後退」サイン 有効求人倍率版「サーム・ルール」では景気後退期

東洋経済オンライン / 2024年8月9日 8時30分

逆に、高齢者や女性の労働参加率が上がれば、失業率は上がりやすい。これらの動きが景気循環とは違った要因で生じた可能性が高いことも、日本版サーム・ルールの説明力の低さにつながっている面があるだろう。

他にも、コロナ禍では雇用調整助成金が大幅に拡充され、休業状態の人が大幅に増加した。失業率は政策の影響を受けやすい面もある。

有効求人倍率のほうが景気循環と連動する

もっとも、日本の場合は失業率よりも有効求人倍率のほうが景気循環と連動性が高いことが知られている。そこで、以下では「有効求人倍率版サーム・ルール」を作成し、景気後退期との連動性を確認する。

有効求人倍率の変化を用いて景気循環(景気後退期)を予想するためにいくつかのルールを設定する必要がある。筆者が検証した結果、「有効求人倍率の過去3カ月平均が過去12カ月の最高値の0.06ポイント以下となった月は景気後退期である」とすれば、比較的説明力が高そうだった(これを「有効求人倍率版サーム・ルール」と呼ぶ)。

まさか本家「サーム・ルール」を発案した元FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)のサーム氏も日本の有効求人倍率で応用されると思っていなかったことだろう。

具体的にルールを適用して景気後退期と比較すると、かなり連動性が高いことが分かる。

例えば、日米でデータが比較できる1965年1月~2022年12月の696カ月について、景気後退期かそうでないかの正答率を計算すると、本家のアメリカのサーム・ルールの正答率が約83.3%で、筆者が調べた日本の「有効求人倍率版サーム・ルール」の正答率は約77.6%だった。本家には敵わなかったが、比較的高い数字である(サーム・ルールは基本的には景気後退期入りのタイミングを示唆するルールであり、景気後退期の終わりを予想するとは言われていないことには留意)。

なお、日本の完全失業率についてサーム・ルールを単純に当てはめた正答率は約67.4%にとどまった。

有効求人倍率はハローワークの統計であり、ネット求人などが増える中で、特に大企業の求人などは含んでいないという指摘もある。しかし、現状では日本の場合は有効求人倍率を用いたほうが景気循環の説明力が高いと判断できる。

2023年11月からずっと「景気後退期」

7月30日に公表された6月の有効求人倍率は1.23倍となり、前月の1.24倍から低下した。過去3カ月移動平均は1.243倍で直近12カ月の最高値は1.317倍だったことから、有効求人倍率版サーム・ルールを適用するとマイナス0.074ポイントとなり、景気後退期に入っていることになる。

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