複雑な「体操競技の判定」、審判支えるAIの凄み 富士通が国際体操連盟と採点システムを開発
東洋経済オンライン / 2024年8月11日 9時0分
ビデオ判定でセーフがアウトにくつがえる……そんな光景が多くのスポーツで見られるようになっている。選手の動きを360度で捉えて、スローモーションやズームイン、角度を切り替えて確認したり、分析映像なども見られるようになり、より正確で公平な判定ができるようになった。
【写真を見る】体操競技で審判が判定する際のサポートとして利用されているJSS
どうしても人の目だけに頼るのでは限界がある。採点型の競技はなおさらで、技が高度化、複雑化すればするほど審判への負担は大きくなる。
そんなスポーツの1つである体操競技には近年、人工知能(AI)を活用した採点システムが取り入れられ、進化を続けている。
採点型競技でのAI導入は世界初
富士通が国際体操連盟と共同で、審判の判定をサポートする「Judging Support System(以下、JSS)」の開発をスタートしたのは2016年。2019年に一部の種目から活用を始め、2023年ベルギーのアントワープで行われた「第52回世界体操競技選手権大会」で全10種目に適用された。採点型競技でのAI導入は世界初の取り組みで、今後さまざまな世界大会でJSSの本格運用が見込まれている。
【写真】体操競技で審判判定のサポートとして取り入れられている採点システム「JSS」
JSS開発のきっかけについて、富士通の藤原英則氏は次のように話す。
「2015年に国際体操連盟の幹部の方が『これからはロボットが採点する時代がくるね』と言ったことが始まり。それを真に受けて半年後にプロトタイプをつくって見せたら、『あれは冗談だよ』と言われたが(笑)、冗談で終わらないようにとチャレンジすることにした」
思わぬ一言から始まったが、このとき藤原氏は他社が手掛けてない、誰も見たことがない未来を描く仕事をして、新たな価値を創造し市場を生み出したいと考えていたという。
「誰も見たことがないということは、後から技術を追い付かせていくことになる。しかし、技術者からは『こんなことできるわけがない』と言われる始末。実際の開発がスタートしてからも問題や課題だらけ。本当に10種目の判定ができるのか危ぶまれた。一度は審判からも使えないと指摘され、本当に挫折しそうになった。しかし、そこから技術者を含めたチームの強い結束力が生まれた」
人の動きを高精度にデジタル化
体操は、男子があん馬・つり輪・跳馬・鉄棒・平行棒・ゆか、女子は跳馬・平均台・段違い平行棒・ゆかと全10種目ある。
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