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複雑な「体操競技の判定」、審判支えるAIの凄み 富士通が国際体操連盟と採点システムを開発

東洋経済オンライン / 2024年8月11日 9時0分

「今は審判が迷ったときに、映像だけで判断しなくてもいいという安心感と、より公正な判断ができるようになった。JSSの利用が拡大していけば、さらに精緻な判定が実現していくと考えている」

トレーニングの精度向上にも期待

今後は、世界大会などにおける審判サポートだけでなく、選手の能力や技の習熟度を評価するなどトレーニング中に活用することも期待されている。

「これまで選手とコーチの関係は感覚の世界であり、定性的な指導が中心だったが、これから定量的なデータを活用すれば、選手自身で競技力を向上させることもできるようになる。そうなればAIが選手をエンパワーメントするといった世界も生まれるかもしれない。しかもJSSは国際的な審判の判定基準を集約させたAIのため、活用すればトレーニングの精度も必ず向上するはず。今はスポーツという人間の世界にAIがいきなり入ってきて、どんな化学反応が起こるのか検証している段階とも言える」

もともと藤原氏が体操競技に目を付けたのは、人の3次元情報がこれからの時代に役立つと考えたからだ。

中でも体操は「キング・オブ・スポーツ」といわれ、人の動きのすべてを包含しているスポーツ。もし体操の動きを捉えられる技術を実現させれば、ほかのスポーツにも展開できるという狙いがあった。

「日本でのスポーツの位置付けは教育が中心。アメリカのような巨大なエンターテインメント産業でもなければ、イギリスのように文化として完全に成熟しているわけでもない。いつか日本でもスポーツを産業化するような技術、さらには少子高齢化に対応できる技術が生まれるかもしれないと考えている」

スポーツの産業化の観点では、スター選手を生み出し、観客を増やしていくための技術に発展するかもしれない。少子高齢化の観点では、スポーツで培った技術を隣接領域であるヘルスケアに活用して健康寿命を延ばすことができるのではないかという目算がある。この2つのサイクルを同時に回していくことで、新たなビジネスチャンスを捉えたいという。

ヘルスケアやエンタメ分野での活用も視野

こうした新たな活用へのカギとなるのが、JSSで使用されている高精度な姿勢認識技術だ。

例えば、ヘルスケアの分野では、医師や理学療法士など専門家の知見をもとに正しい動作を定義し、患者や生活者の動作をデータ化したうえで、回復期の患者の運動療法や認知予防の医療をサポートできるかもしれない。

また、エンターテインメント分野では、スポーツ選手の3Dデータを活用して、新たな映像体験の実現やフォームなど動きの改善のほか、ゲームやアニメーション製作に活用することも視野に入れている。

実際、すでにプロゴルファーの監修のもと、今までの弾道測定だけでなく、身体の動きを因果分析してゴルフトレーニングに役立てるビジネスもスタートさせている。藤原氏もこう語る。

「現在、JSSは人の動きを正確に捉えることができるHMAというプラットフォームの上に体操競技のアプリケーションを搭載しているかたちになります。ということは、HMAをもとに何を分析するか。そこに可能性と汎用性の高さがある。AIと人間が共存できるポイントとはどこか。私たちはJSSをはじめとした実証実験を重ねていくことで、今後のAIとスポーツ、そしてビジネスの可能性を探っていきたいと考えています」

國貞 文隆:ジャーナリスト

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