ベンツ「質から量」への転換を促したW202の残像 「最善か無か」を感じる最後の世代をいま見直す
東洋経済オンライン / 2024年8月12日 8時30分
ボディデザインは、車輪とボディとキャビンからなるプロポーションの均衡がとれていた。それもファンが一気に増えた理由だろう。メルセデス・ベンツというブランドに惹かれて選んだにしても、広くなった室内と大きな荷室、そしてパワフルになった走りにより、見返りはちゃんと得られたのだ。
個人的には、おにぎり型のリアコンビネーションランプだけが「ちょっとなぁ」と思う点だった。
荷室の開口部をできるだけ大きくとり、バンパーレベルから開けられるようにした機能主義的デザインの結果だが、全体の雰囲気からみると、リアコンビネーションランプの形状だけが即物的に映ったからだ。
死ぬ思いでテストに臨んだ安全への執念
乗員保護技術の拡大も、話題になったことのひとつ。そもそもメルセデス・ベンツは、いちはやく車体前後にクラッシャブル構造を取り入れていたメーカーだ。
私は、1979年発表の2代目Sクラス(W126)が、東京の路上で「ハイエース」に追突されているのを目撃したことがある。
Sクラスのトランクはきれいに潰れてなくなっていた一方、キャビンはまったく変形しておらず、ハイエースもほぼ無傷のように見えた。「これがクラッシャブル構造か」と感心したものだ。
「今ではワイヤでクルマを引っ張ってバリアに車両をぶつけることもできるし、コンピュータによる解析技術も進んでいますが、昔は自分で運転してバリアにぶつけていたから、試験ごとに死ぬ思いでした」
1990年代にドイツで出会ったメルセデス・ベンツ車の安全技術担当の博士が、そう語っていたのを覚えている。このメーカーにとって、衝突安全とはそれほど重要だったのだなと、これにも感心した。
W202では、側面衝突における乗員保護も重視された。ボディ構造において、ドア内部にサイドインパクトバーなるチューブを入れるとともに、Bピラーには3層構造を採用。さらに、アンダーフロアには横方向のバーを追加して、横からの衝撃をセンタートンネルが受け止める設計が取り入れられた。
画期的だったステーションワゴンの投入
ラインナップは豊富。デビュー当初の日本向けだけでも、2.2リッター4気筒の「C220」、2.5リッター5気筒ディーゼルの「C250D」、2.8リッター直列6気筒「C280」が用意され、特にC280のバリエーションはスポーツラインやAMGまで、カラフルだった。これも初代Cクラスのイメージには、大きなプラスだったといえる。
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