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鉄道車両を動かすシステムは見えない「小宇宙」だ 一部でもトラブルがあると全体が機能しない

東洋経済オンライン / 2024年8月13日 7時30分

こう見ると、鉄道は、先述した機械式時計やシリンダーオルゴールに似ている。いずれも、多くの要素が連動または連携して、目的の「機能」を果たしているからだ。

また、鉄道の列車ダイヤは、シリンダーオルゴールのシリンダーに似ている。いずれも発揮する「機能」の計画を刻み込んだものであり、コンピューターを動かすプログラムと同じような役割を果たしているからだ。

鉄道の列車ダイヤは、曜日や月などによって変わることがあるが、そのことを除けば基本的には毎日同じリズムを刻むのを繰り返している。この点は、シリンダーオルゴールが同じ楽曲を繰り返し演奏する様子と似ている。

以上紹介した機械式時計やシリンダーオルゴール、そして鉄道は、それぞれが「システム」であるという点で共通している。

それでは「システム」とは何か。『広辞苑第七版』には、「複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体。組織。系統。仕組み。」と記されている。

鉄道はまさにこれである。冒頭で筆者が「鉄道は列車ダイヤにしたがって陸上輸送を実現するシステムである」と述べたのは、このためである。

見えない舞台裏

ここまで読んだ方のなかには、「わかりにくい」「イメージしにくい」と感じる方もいるだろう。

それは当然のことである。なぜならば、鉄道を構成する要素の多くは、われわれ利用者の視点では見えないからだ。そもそも見えないものを想像することは難しい。

ここで、また機械式時計の話をしよう。われわれは基本的に機械式時計の文字盤と、その上を動く針しか見ていない。理由は単純で、文字盤の裏側が見えないからだ。たとえその裏側に「小宇宙」とも称される複雑かつ緻密なメカニズムがあり、数ある部品たちが見事に連携し合って動いていても、それに興味を示す人は少ない。

鉄道も同じだ。われわれは基本的に駅などの施設や、線路や踏切などの設備、線路を行き交う車両、そして駅員や運転士、車掌などの人しか見ていない。たとえその舞台裏で施設や設備、車両、人が見事に連携し、全体として自動車では実現できない陸上大量輸送を実現していたとしても、それに興味を示す人は少ない。

そこで筆者は、鉄道の舞台裏を取材することで、その全体像を把握しようとした。取材した対象は、新しい鉄道の建設現場から、電車などの車両や鉄道を支える機器を製造する現場、運転士や車掌の職場、そして車両や設備のメンテナンスの現場まで多岐にわたる。

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