多くの大人が決して言わない「残酷なお金」の現実 「手取りはすべて使い切り、職業はこう選べ」
東洋経済オンライン / 2024年8月13日 18時0分
小説家では、金など稼げそうにない。僕が通っていた中学・高校では、学年で何人か面白い作文を書いたものが選ばれ、聖光芸苑と名付けられた小さい冊子に載せられるという取り組みがあった。僕は一生懸命いろんな文章を書いたけど、聖光芸苑に載ったことは一度もなかった。
同級生の中には、本格的な小説を書いて載せているやつがいた。この200人の中だけでも選ばれない僕の文が、本屋さんに並び、同時代の天才作家たちだけでなく、夏目漱石や太宰治と戦う。まったく想像がつかないことだった。
僕は「小説家になりたい」というカードをそっと心の奥底のポケットにしまった。僕は頭も良くないし、何か天才的なセンスがあるわけでもない。
だから、情けないけれども国家に保証してもらう資格に頼ろう。そう思い、医者という道を選んだ。僕の自己分析は不幸にも当たっていて、受験勉強に苦しみ、高校を出てから丸2年も予備校に通う羽目にはなったのだけれど。
まさか医者になってから「小説家になりたい」が顔を出してくるとは思わなかったし、本当になれるとは思っていなかった。でも、僕みたいな考え方もあるよというお話だ。
中山 祐次郎:外科医
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