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ふるさと納税「ポイント禁止令」は悪手でしかない 「もぐらたたき」総務省"指導"はどう影響する

東洋経済オンライン / 2024年8月13日 12時0分

これほどふるさと納税が広がったのは、前述した通りポータルサイトのおかげと言っていい。黎明期は個人がいちいち自治体を検索し、ホームページから「ふるさと納税」のページにたどり着くという手間をかけていた。しかも、掲載されている写真は自治体ごとにバラバラのクオリティ。スナップ写真みたいなものまであった。時代が変わって、今のポータルサイトはカタログのように美しく魅力的なビジュアルぞろいで、これもサイト側のフォローがあってこそ。ふるさと納税が1兆円超えとなったのには、ポータルサイトの整備と宣伝力なくしては実現できなかったはずだ。

つまりサイト側もビジネスとして取り組んでおり、自社を使ってもらう以上、自社のポイントを付与することで集客し、さらに自社サービスでポイントを使ってもらうよう期待するのは当然のこと。自社のメリットを完全に封じられたなら、うまみはないのでふるさと納税から撤退するという経営判断はあり得るだろう。

ポイ活民の心が離れていかないか心配

ふるさと納税自体にも賛否はあり、住民税が流出する一方の都市部にとっては「悪の法」だろう。片や、能登半島のように被災地支援のために寄付できる仕組みは素晴らしいと思う。ただし、お上が「こう決めました」とルールをどんどん変えるのは、最初からハンデありのケンカを見せられているような気がしてしまう。

「ポイント付与が無くなっても、ふるさと納税自体は減らない」という見方もあるが、それは半分だけ正しい。それまで使っていたポータルサイトが撤退すれば、消極的選択として「面倒だからしなくなる」ことはあるだろう。読んでいた雑誌が休刊になったため、雑誌そのものを読む機会が減るようなものだ。

そもそも、本当に「この自治体に寄付を」という気持ちで向き合っている人ばかりではない。欲しい返礼品の検索をしてから決める人が大半だろうし、SNSで「返礼品でコストコのクーポンが受け取れるから、実質年会費無料で会員になれる(現在はなし)」などの情報が飛び交う世の中だ。貯めていたポイントが使えたり、倍増できたりするサイトで、おトクに魅力的な返礼品をゲットできるからというのが、人々を動かしてきた強い動機・インセンティブだ。「おトクさ」をあからさまに削り落とそうとすれば、その心理に冷や水を浴びせるだけだろう。

物価高への対抗策として、「ポイ活」を挙げる人は多い。ふるさと納税でも、価格が高騰した日用品を選ぶ人も増えている。このように生活防衛の意識でふるさと納税を行っている人が増えている現状を、政府は重くとらえていないのではないか。

ポイント全面禁止は悪手にしか思えない

ポイントを禁止すれば手数料が下がるはず、というのものんきな錯覚だろう。不当な金額は正されるべきだろうが、企業は事業に見合う金額が稼げなければ、そこから手を引くだけだ。

ポイント全面禁止は自治体にとっても、ふるさと納税制度にとっても、悪手にしか思えない。

寄付をより多く集めたいなら消費者心理を研究すべきだし、手数料が問題だと言うならサイト側とそっちのルールを話し合うほうがいい。カード普及のためにマイナポイントを配った総務省なら、いかにポイントで人が動くかを知っているだろうに――。

今回の告示では、カード決済によるポイント付与は禁止に当たらないとしているが、次はそこがポータルサイト側の主戦場になりそうだ。いずれにしても、来年9月末までに、最後の駆け込み寄付でお祭り騒ぎになるだろうことだけは予言しておく。

松崎 のり子:消費経済ジャーナリスト

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